幕内2場所目、ウクライナ出身の東前頭9枚目安青錦(21=安治川)が、2日目から6連勝で1敗を守った。相撲巧者の前頭遠藤を押し出し。無敗の大関大の里、前頭伯桜鵬をピタリと追走している。新入幕の先場所も千秋楽まで優勝の可能性を残すなど、11勝4敗で敢闘賞を受賞した実力は本物。来日前から大相撲の大ファンで、現在も往年の名力士のDVDを見て研究する、根っからの“相撲マニア”が、優勝争いの台風の目となりそうな気配だ。
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胸が高鳴った。技巧派力士の映像を、好んで見てきた安青錦にとって、目の前に相撲巧者の遠藤がいる状況に、自然と鼓動が速くなった。「左四つになったら強い」と、相手の長所は熟知しているだけに、立ち合いは突いて出た。左四つに組み止められても、力の限り寄り立て、最後は右のど輪で押し出した。ウクライナに住んでいたころから、テレビで見てきた遠藤との初顔合わせを制し「相撲がうまいし、有名な関取なので」と喜びもひとしおだ。
この日は不発だったが、よく見せる右のど輪の立ち合いは、元横綱日馬富士の映像をYouTubeで研究して身に付けた。場所中であっても、部屋にある師匠の安治川親方(元関脇安美錦)保有のDVDを、食事しながら見ることも多い“相撲マニア”だ。スピードを武器に「F1相撲」と称された元関脇琴錦(現朝日山親方)、研究熱心さから「相撲博士」と呼ばれた元大関旭国(故人)ら、技巧派力士の取組が大好き。自身も182センチ、138キロと大柄ではないだけに、先人の技を目に焼き付けた。
師匠も屈指の技巧派だ。初対面直後、助手席に乗せてもらった安青錦は「ヤベー、安美錦の車に乗ってる!」と、心の中で叫んだという。一ファンとして心酔していた。だからこそ師匠の教えを素直に聞き入れ、歴代1位に並ぶ初土俵から所要9場所(付け出しを除く)で先場所新入幕。いきなり千秋楽まで優勝の可能性を残す11勝を挙げた。
戦火を逃れて憧れの大相撲、憧れの日本に来た。だからこそ日本語の習得も早く、この日も「しょっぱい相撲だった」と、日本語どころか相撲用語も駆使。好きな食べ物の1つは「青魚(あおざかな)」と、使う日本語もチョイスも渋い。同じく戦火を逃れ、ドイツ・デュッセルドルフでハウスクリーニング業に従事する両親、ウクライナに残る兄が、そろって自身の勇姿を見る日が夢。「今いるところは目指しているところじゃない。もっと上を」。夢舞台を一段と駆け上がるつもりだ。【高田文太】
☆普段は土俵入りで太刀持ちをしている平戸海を破って3連勝の豊昇龍 集中して取れた。(この日だけ太刀持ちを外れた平戸海は)巡業から手合わせしている良い稽古相手だけど、土俵に上がったら勝負。暑くなってきたから(クーラーの付けっぱなしで)へんとう炎に気を付けないと。それで休場したこともあるし。
☆豊昇龍と普段太刀持ちの平戸海が対戦するため、初めて本場所の横綱土俵入りで太刀持ちを務めた宇良 緊張した。今場所が始まってから「やってくれないか」と言われ、やることになった。(2月の徳勝龍の引退相撲で太刀持ちを務めた経験はあるが)全然違う。

