東前頭5枚目の義ノ富士(24=伊勢ケ浜)が2日連続の番狂わせで、優勝争いを混戦に持ち込んだ。横綱大の里から金星を挙げた翌日、関脇安青錦を撃破。ともに完勝の好内容で、初土俵から10場所連続での勝ち越しを決めた。草野から改名した最初の場所で、ちょんまげのご当地力士が大暴れ。優勝争いは1差に6人がひしめく展開になった。
◇ ◇ ◇
もろ差しを狙った前日とは一転、義ノ富士は頭でかましてから突っ張った。止まることなく手足を動かし、突き出した。誰もが攻略できなかった安青錦の前傾姿勢を突き起こした。「思った通り。その通りに相撲が取れて良かったです。止まらず、休まず、手だけでなく、足も出す。突くというより、(上体を)起こす突き」。狙い通りだった。
「突っ張れ」。前夜、日大時代の恩師、木崎監督に金星を電話で報告した後、メッセージが届いた。自分の考えと一致した。伊勢ケ浜親方(元横綱照ノ富士)からは「止まるな」との助言があった。義ノ富士によれば、立ち合いの種類は大きく分けて4つ。相手によって使い分ける器用さがある。「今日は迷わずいけました」と思い切りも良かった。
10月のロンドン公演は不参加だった。直前に右ふくらはぎなどを痛め、一時は歩けなくなって休場。ケガを公表できず、「パスポートを取得し忘れた」とのデマも広がった。稽古は十分でなく、九州場所も悩んだ末に出場した。今も「めっちゃ痛い」。にもかかわらず「一瞬で前に出ると、痛みを忘れるくらい」。踏んだり蹴ったりの場所前から、本場所を盛り上げる存在になった。前夜は「餃子の王将」で食事をしていると、客から声をかけられるなど顔も名前も売れてきた。
出身地・熊本からは、連日のように両親や親戚らが駆け付ける。「たくさん応援してもらってるんで、いい結果で終わりたいです」と義ノ富士。優勝争いに残っているが「多分、気にしてないです」。目標はまず、あと2勝。「先場所は(勝ち越しが)千秋楽だったんで、11日目に勝ち越せたのはうれしい。勝ち越したら、次は2桁かなと思って…」。2日後には、もっと大きな目標を立てる状況になっているかもしれない。【佐々木一郎】

