時空を行き来し、次元を操るドクター・ストレンジが参入すると、マーベル・コミック作品は一気にややこしくなる。

というわけで、「ホームカミング」3部作の完結編「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」(7日公開)は、込みいった過程をたどった末に想像を超えた大団円を迎える。

前作「-ファー・フロム・ホーム」(19年)の終盤で、「スパイダーマンの正体はピーター・パーカー」と明かされてしまったピーター(トム・ホランド)は、世間の厳しい目にさらされて行き場を失い、家族や友人たちも非難を浴びるようになってしまう。

「正体を知られなかった世界に戻りたい」。ピーターが頼ったのが、同じニューヨークに住むドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)だった。ドクターは危険を冒してピーターの願いをかなえるが、アクシデントが重なって結界が開き、スパイダーマンがかつて倒した旧敵たちが異次元から続々よみがえってしまう。

文字通り最大の危機。そんな時、ピーターの助っ人として登場したのは、「ストレンジ世界」ならではの「あの人たち」だった。

17年の「-ホームカミング」から3部作すべてのメガホンを取ったジョン・ワッツ監督のスパイダーマン愛は相当なもので、縦横無尽にその世界を広げている。なるほど、ドクター・ストレンジを絡めた理由もわかってくる。

大学進学と世界の危機を同次元で考えてしまうピーターの子供っぽさやドクターの意外な人間くささが相まって、序盤に重なる「失策」の連続にはやきもきさせられるが、これもワッツ監督の術中ということなのだろう。

ピーターと恋人MJ(ゼンデイヤ)親友ジェイコブ(ネッド)との相変わらずのやりとりにホッとさせられ、旧敵ドック・オク(アルフレッド・モリーナ)の復活は懐かしかった。

ここでは伏せるが、想像もしなかった「豪華キャスト」の登場で、文字通り異次元世界が楽しめる。【相原斎】 (ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)