アカデミー賞の前哨戦として近年注目を集めているトロント国際映画祭が、今月6日から16日まで開催され、カンヌ国際映画祭で最高賞「パルムドール」を受賞した是枝裕和監督の「万引き家族」をはじめ、河瀬直美監督の最新作「Vision」やレディー・ガガの映画初主演作となる「アリー/スター誕生」、突撃アポなし取材で知られるマイケル・ムーア監督が反トランプ政権を描くドキュメンタリー「華氏119」など豪華な作品が今年も上映されました。昨年は、最高賞にあたる一般の観客の投票で決まる「観客賞」を受賞した「スリー・ビルボード」が、アカデミー賞で主演女優賞と助演男優賞をW受賞したのをはじめ、一昨年の観客賞を受賞した「ラ・ラ・ランド」は作品賞こそ逃したものの史上最多となる14部門にノミネートされ、監督賞など6部門を受賞するなど観客賞の行方には毎年注目が集まっています。そして、16日に発表された今年の観客賞に輝いたのは、実話を基にした人種も階級も超えた友情を描いた「グリーン・ブック」(ピーター・ファレリー監督)でした。そんな今年のトロント国際映画祭に出品された注目作品を紹介します。
◆「ファースト・マン」
「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督の新作で、アポロ11号で人類初の月面着陸を果たしたNASAの宇宙飛行士ニール・アームストロングを描く。ライアン・ゴズリングがアームストロング役を演じています。
◆「アリー/スター誕生」
ベネチア国際映画祭でワールドプレミア上映され、大絶賛された話題作。ブラッドリー・クーパーがメガホンをとり、レディー・ガガが映画初主演を果たした。ガガ演じる音楽界での成功を夢見るアリーがクーパー演じるジャクソンにその才能を見いだされ、ショービズの世界で愛と挫折を経験しながらスターへの階段を駆け上っていくストーリー。ガガが全編ほぼノーメイクで撮影に挑んだことでも話題に。
◆「デストロイヤー」
ニコール・キッドマンがロサンゼルス市警察の捜査官を演じるミステリースリラー。美しさをかなぐり捨てて一見誰だか分からないほど変貌した容姿での怪演が話題に。ショートヘアにほぼノーメイクでボロボロになりながらも、ある殺人事件の凶悪犯を追う姿は必見です。
◆「ジ・オールド・マン&ザ・ガン」
「明日に向かって撃て!」(69年)や「大統領の陰謀」(76年)など数々の名作に出演してきたロバート・レッドフォードの出演作。脱獄を何度も繰り返したことで知られるフォレスト・タッカーが、79年に仲間の囚人2人とカヤックを作って脱獄した実話を基にしたストーリー。レッドフォードはこの作品を最後に俳優業から引退すると表明しています。
◆「ビューティフル・ボーイ」
「君の名前で僕を呼んで」(17年)で脚光を浴びた若手俳優ティモシー・シャラメが、薬物中毒の息子を演じ、スティーブ・カレル演じる父との葛藤を描いた話題作。
◆「ベン・イズ・バック」
ジュリア・ロバーツの完全復活作として話題の作品。「レディ・バード」(17年)に出演した新進俳優ルーカス・ヘッジ演じる薬物中毒の息子のせいでバラバラになりかけている家族を必死に守ろうとする母親をロバーツが熱演しています。
◆「ローマ」
ジョージ・クルーニーとサンドラ・ブロック主演の「ゼロ・グラビティ」(13年)で知られるアルフォンソ・キュアロン監督の自伝的な作品。70年代のメキシコシティにおける普通の中流家庭の生活を描いた白黒映画で、配信サービス世界最大大手ネットフリックスによる作品として初めてベネチア国際映画祭コンペティション部門で最高賞にあたる金獅子賞に輝いた話題作。
【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)