11・12月に歌舞伎座で行われる市川海老蔵(44)の「13代目市川團十郎白猿」襲名披露公演で、8代目新之助を襲名して初舞台を踏む堀越勸玄君(9)が成田屋史上最年少で「毛抜」に挑戦すると聞いて、思い浮かべた伝説の公演がある。
59年前、1963年の歌舞伎座。7月の「納涼大歌舞伎」昼の部の大喜利で「白浪五人男『稲瀬川勢揃いの場』」が上演された。出演したのは、南郷力丸に当時8歳だった中村勘九郎(後の18代目勘三郎)、弁天小僧菊之助に7歳の坂東八十助(10代目三津五郎)、日本駄右衛門に7歳の大谷広松(4代目中村雀右衛門)、忠信利平に7歳の小川光照(3代目中村又五郎)、赤星十三郎に8歳の中村梅枝(5代目時蔵)と子役ばかりで、「ちびっこ歌舞伎」と言われた。
上演のきっかけは勘九郎が父の17代目勘三郎に「『弁天小僧』がやりたい」と申し出たこと。勘九郎自身が弁天小僧をやるのかと思いきや、自分は南郷を演じ、「弁天小僧は八十助君がいい」と譲って実現した。子役たち5人が花道からさっそうと登場し、それぞれ名乗る「つらね」を巧みに演じる姿が人気を呼んだ。チケット窓口には長蛇の列ができたこともあって、途中から夜の部でも上演され、千秋楽には17代目勘三郎ら父親たちが捕り手役で出演したという。
そんな「ちびっこ歌舞伎」の再現はどうだろうか。今月の歌舞伎座では子役たちが活躍している。勸玄君は第2部の海老蔵主演「夏祭浪花鑑」で市松、舞踊劇「雪月花三景」では姉市川ぼたん(10)も加えて親子3人で踊ったほか、第1部の「當世流小栗判官」には寺島しのぶの長男の寺嶋眞秀(9)、第3部「風の谷のナウシカ」では主演する尾上菊之助の長男丑之助(8)と長女の寺嶋知世(7)が出演していた。ほかにも中村勘九郎の勘太郎(11)長三郎(9)兄弟、市川右団次の長男右近(12)らが子役として頑張っている。共通しているのは、みんな芸達者だし、踊りもうまいこと。そんな子役たちが集まって、歌舞伎座で1つの演目を上演するという楽しい企画はどうだろうか。子役たちは別々に舞台に出ることが大半で、同じ舞台に立つことはあまりない。子役の時期は短いだけに、見てみたい夢の企画です。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)




