1960年代、米ソが有人宇宙飛行計画を実現すべく開発競争を繰り広げていた時代、まだ人種差別が色濃く残っていた時代の、黒人の女性数学者たちの活躍を描いた。

 タラジ・P・ヘンソンが演じるのは、少女時代から天才の片りんを見せてきたキャサリン。彼女をはじめ、管理職昇進希望のドロシー、エンジニア志望のメアリー、NASAで働く3人の働きで、宇宙開発そのものが大きく動き始める。

 トイレも白人、有色人種で分かれていた時代。キャサリンが広大なNASAの敷地を端から端まで走って、トイレに行く場面が印象的だ。ケビン・コスナー演じる上司に「どこに消えてたんだ」と怒られる理不尽さ。

 こんな状況でも、今大事なこと、最優先すべきこと(つまりは解析と計算)に必死に取り組むキャサリンの姿に、素直にすごいと思った。お仕事作品の主人公としては、かなりのバリバリぶり、いっぺんに好きになった。明るさを忘れず、三者三様に努力する姿が気持ちがいい。

 原題は、(歴史の)陰に隠れている人々という意味の「Hidden Figures」。彼女たちの努力と、自分が自由に仕事ができるこの状況、確かに地平はつながっていると思えた。いろんな意味の涙が出た。【小林千穂】

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