第2次大戦時にヒトラー率いるナチス・ドイツと渡り合い、劣勢にあった英国を勝利に導いたウィンストン・チャーチル。実話を基に、首相就任からダンケルクの戦いまでの27日間を描いた歴史エンターテインメント。

 米アカデミー賞の主演男優賞を受賞したゲイリー・オールドマンが見事にチャーチルを演じている。熱演を支えたのは同賞のメーキャップ&ヘアスタイリング賞に輝いた辻一弘氏。2人の演技と技が融合した作品でもある。

 「あなたが受けなければ、私は出ない」。もう映画の仕事はしないと決めていた辻氏はオールドマンから懇願され、ハリウッド復帰した。チャーチルの写真を集め、ドキュメンタリーを見て人柄まで研究した。特殊メークでは、しわ1本の位置にまでこだわった。

 辻氏は言う。「その人が何を考えているかによってしわにクセがついてくる。内面を理解すると、しわの意味が分かってくる」。

 和平条約を結びヒトラーに屈するのか、多数の死者が出たとしても徹底抗戦するのか。チャーチルが歴史的決断を下す場面では顔が大写しされる。眉間のしわには深い意味がある。【松浦隆司】

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