大怪獣が突然死し、残った巨大な死体。さて死体をどうするか-。この着想だけでグッときた。刑事もので撃ち合いを見ると「本人と上長の始末書の数すごいだろうな」とか、カーアクションシーンを見ると、破壊された屋台は補償されるんだろうかとか、そもそも誰が壊したか分からないから泣き寝入りか、とかそんなことを思ってしまう。

大怪獣の死体をめぐる駆け引きは、コミカルでブラックユーモアに満ちている。各省庁の駆け引きと押し付け合い、ありえそうなやりとりが繰り広げられる。死体から出る悪臭を、ぎんなんのにおいと例えたり、死体に名前を付けダサすぎると反発されたり、政治家がアピールに活用し、観光資源になりそうだと分かると駆け引きの手が変わってきたり。起こりそうなありとあらゆることを詰め込んだ。

山田涼介演じる特務隊員の帯刀アラタが、腐敗が進みガスで膨張し続ける大怪獣の後始末に挑むのだが、彼のなぞめいた存在がストーリーが進むごとに浮かび上がる。ひとくせ、ふたくせあるキャラクターの中、一線を画した存在がきりりとして合っている。三木聡監督。【小林千穂】(このコラムの更新は毎週日曜日です)