原作の漫画家かわぐちかいじ氏は、今年1月の会見で「映像化は絶対にできないものにしようと思って描いている。お話をいただきテーマ、スケールにおいて実写化できないと思った」と語った。その言葉をはね返すように、主演の大沢たかおがプロデューサーも兼任し実写化にこぎ着けた。

日米両政府が極秘に建造した高性能原子力潜水艦シーバットの艦長に任命された海江田四郎は、核ミサイルを積載して突如、反乱逃亡。理想とする世界の実現を目指し自らを国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言。海上自衛隊一の操艦を誇り、神出鬼没の動きで日米両国を翻弄(ほんろう)する艦隊戦のスケールは米ハリウッドの作品に引けを取らない。それが実現できたのは、17年の第89回米アカデミー賞で「マンチェスター・バイ・ザ・シー」が主演男優賞、脚本賞を受賞したAmazonが、日本国内で映像制作を始めて5年で、初めて劇場版映画の製作に乗り出したからに他ならない。

1988年(昭63)から96年まで連載され、全32巻に及ぶ長大な原作の全てを上映時間113分の映画1本で描ききれるわけはない。だからこそ、もっと先を見たかったという声も聞こえてくるが、それを誰よりも実現したいのは「日本もできるんです」と断言する大沢本人だろう。日本のエンターテインメントが世界に挑んでいく扉を開く後押しができるのは、観客だ。【村上幸将】

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