大阪・関西万博開幕から2カ月が過ぎました。過去20年で7つの万博に通い「万博おばあちゃん」と呼ばれる愛知県瀬戸市の山田外美代さん(76)は、4度目の「皆勤賞」を目指す今回の万博の運営に、はがゆさを感じています。一般来場者として公式サイトで予約し、毎日、万博に通うことで見えてきた「苦言」があります。
昨年12月に長男和弘さん、夫鐘敏さんとともに会場近くの大阪市住之江区の団地に一時移住。家族で午前9時台の入場を目指す日々です。
この2カ月で、最も気になっているのは、大阪メトロ中央線夢洲(ゆめしま)駅に直結する万博会場東ゲートの混雑がまったく緩和されないことです。
外美代さんは「万博が好きだから、あえてきついことも言います」と前置きし、「まったく来場者の目線に立っていないですね。外に目が向いていないと思う」とピシャリと言い放ちました。
連日、公式サイトでの入場時間予約、パビリオン予約を引き受ける和弘さんは「開幕してから毎日、入場時の統計をとっているのですが、圧倒的に入場待ち時間が増えています」。
この週末の14日土曜日、山田家に“アクシデント”が起こりました。家族3人分の9時台入場予約が取れず、外美代さん、鐘敏さんは9時台、和弘さんだけが10時台の予約でした。
午前9時38分に夢洲駅に到着後、予約時間ごとに入るゲートが違ったため、別々のレーンに並びました。外美代さんが並んだ9時台のレーンは、入場が始まっており、列は和弘さんが並んだレーンよりも短く、「両親のほうがかなり速く、入場できるだろうな」と思ったそうですが、和弘さんのほうが速く、遅れること約30分、外美代さんらがやっと入場できました。
入場ゲートの運営を委託されている警備会社は1社ではなく、数社あるといい、各社によって、水筒の中身を飲ませるところと飲ませないところなどの微妙な違いがあります。手荷物検査をするスタッフの習熟度、やる気にも差があり、入場待ち時間の「レーン差」があるといいます。
来場者にスムーズに“最速入場”してもらうために「ペットボトルの開封、未開封によって取り扱いの違い、缶・瓶の持ち込み禁止などを事前にアナウンスする会社と、まったくしない会社もがある」と和弘さん。
万博の来場者数は5月26日に累計500万人を突破。開幕8週目(6月1~7日)は1日平均約12万8000人が訪れ、1週目から約7割増えました。来場者増が東ゲートの混雑に拍車をかけていますが、運営面の「課題」は改善されていません。
東ゲートは29レーンあります。平日は29レーンのうち団体専用として3レーンを確保しているときもあるといいます。団体専用ゲートは大阪・関西万博へ学校単位での招待事業の団体にも利用されています。この入場ゲートからは小中学校のクラスの引率者が「団体入場口利用確認書」を提示すると、クラスの生徒は手荷物検査なしで入場ができます。
団体用のレーンは流れが速く、時間帯によってはガラガラのときもあるようです。
大阪・関西万博への学校単位での招待事業の「引率者マニュアル」にはこうあります。
「基本的に団体用入場ゲートをご利用ください。ただし、団体用入場ゲートが混雑している場合は、一般用入場ゲートをご利用いただいても構いません。スムーズな入場のため、臨機応変にご対応いただきますようお願いいたします」
一般用入場ゲートの行列にいた大阪府茨木市の自営業の男性(55)は「団体専用レーンで手荷物検査をする警備員の方が手持ち無沙汰そうにしているのを見ると、空いてるのに……って、なんかモヤモヤ感がすごかった」と不満を漏らしました。
一般用の入場ゲートがどれだけ長い列になろうと、一般来場者が団体専用レーンに誘導されるケースを「見たことがない」という和弘さん。外美代さんは「来場者の目線に立った臨機応変さがないんですよね」と残念そうです。ゲートは各会社ごとに運営されているため、「他のレーンのことは…」と漏らすスタッフもいます。
東ゲートでは1レーンに対して、5列や4列、2列に並んでいたり、バラバラな状態も。「並んでくださいと言われるが、どこに並んだらいいか分からないときもある」とは和弘さん。
夢洲駅を降りてからの情報も不足しています。海外の来場者向けの多言語によるアナウンスは皆無。ゲート前の電光掲示板での注意喚起もありません。他にもゲート周辺に日陰がないこと、ベビーカーの課題もあります。
外美代さんは17年アスタナ万博(カザフスタン)など過去の万博では開催国から「万博大使」にも任命され、運営側に助言もしてきました。
今回の万博では、東ゲートが万博の最大のストレスとも言われています。
外美代さんは「入場ゲートは万博の未来社会の入り口です。東ゲートの待ち時間を改善することが、万博を満足できるかどうかの分かれ目になると思います。ちょっとした工夫で、もっと速くなったり、ストレスを和らげることができると思います」。日本国際博覧会協会(万博協会)にも伝えていますが、返答はありません。
万博協会は計2820万人の来場を想定しており、会期終盤は1日20万人以上を見込んでいます。夏が近づくと、さらに人出が増加し、東ゲートはこれまで以上に混雑しそうです。
和弘さんは「万博協会を含め、来場者の気持ちに寄り添った運営をしていく必要があると思います」と言葉を強め、「例えば入場ゲートにビデオを設置し、遅いレーンはどこかを発見したり、責任者が定期的、抜き打ちで各レーンを見て回ったりするなど工夫できることはたくさんあると思います」と“提案”し、「万博協会の幹部の方にも来場者と同じように入場券の購入、来場日時予約、ゲート通過を経験してほしいなと思います」と話します。
外美代さんはこれまでの万博で、会場が来場者の反応を見ながら改善され、「変化」していく様子をみてきました。「万博に1度しか来ることができない人もいる。少しでも、楽しんでほしい」。来場者の声を聞き、改善を重ねていってほしい。生き物が成長するように-。万博おばあちゃんは願っています。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)




