星組新トップに就いた紅(くれない)ゆずるの初作品「オーム・シャンティ・オーム~恋する輪廻」が明日6日から東京国際フォーラムで上演される。18日まで。人気インド映画を題材にした宝塚初のマサラ・ミュージカルで、新トップ娘役・綺咲愛里(きさき・あいり)とのコンビお披露目になる。達者なトーク、旺盛なサービス精神と紅の本領発揮にも期待。実生活では部屋をアジア風からフランス調に一新し、新生星組を率いる。

 舞台衣装か? 惑うほど金ピカのシャツ。「(今年の漢字)金(だから)じゃなく、金運アップですね」。取材場所に入室早々、大笑いした。

 大阪出身でサービス精神、トーク術は劇団有数だ。

 「小学校の時からダウンタウンのテレビを見て育っているので、知らず知らずに笑いの間を。だから、間が違うと、え? 違う! ってなるんですよね」

 典型的な関西人気質。今作演出の小柳奈穂子氏は「紅さんにぴったり」と、紅のトップ初作品を決めた。

 「宝塚でマサラ・ミュージカル? 私にぴったり? そんな感じなんや! って、あらためて(笑い)」

 07年にインドで大ヒットし、世界でも人気となった傑作映画「恋する輪廻」は、1970年代と現代のインド映画界が舞台。人気女優シャンティ(綺咲)に恋をする脇役俳優オームが、彼女を助けようとして事故死。生まれ変わり、30年後、スター俳優になったオームが繰り広げる喜劇だ。

 「ポジティブで、ハートフルなコメディー。ただ私、普段は“つっこむ芸風”ですが、今回はつっこまれる方。下級生をいかに『いいつっこみ』に仕上げていくか。もどかしい」

 これまで前トップ北翔海莉(ほくしょう・かいり)や前々トップ柚希礼音(ゆずき・れおん)が演じる主人公につっこむ役柄が多かった。これからは逆。「(小柳)先生からも、後輩に芸風を譲りましょうと言われ…」と苦笑いした。

 部屋のテイストも一新し、気分も変わった。

 「ずっと家を改装したかったんです。ベッドとか家具、アジアンテイストの内装だったんですけど、フランス風に変えました」

 柚希の影響でアジア家具を使っていたが、もともとは「フランス人の格好がしたくって、宝塚を受験した」と言うほど、フランス好き。「今めっちゃ、落ち着く。私、フランス人やと思うわ」と、また笑った。

 肩肘はらないトークは健在。トップとして「下級生まで、個性を発揮できる自由な組に。私も刺激を受けていきたい」と考える。

 雪組の早霧(さぎり)せいなは、「ルパン三世」「るろうに剣心」など漫画原作ものを成功させ、新たなトップ像を提示。インド映画で船出する紅も、新トップ像の確立が期待される。

 「(早霧は)やはりすごい方。私もよく『個性的』と言われますが、個性をどこまで出せて、どこまで自由奔放に“見せる”か」

 今作演出の小柳氏は、早霧の本拠地初作品「ルパン三世」も手がけていた。

 「小柳先生は生徒を自由に泳がせ、下級生も考える力が芽生える。決まり事がある中で、どこまで自分を解放できるか。自由というより、解放ですね」

 自由という言葉の重みを理解し、新生星組を率いる。紅は今年の抱負に「夢」を掲げた。【村上久美子】

 ◆マサラ・ミュージカル「オーム・シャンティ・オーム-恋する輪廻-」(脚本・演出=小柳奈穂子氏) 世界で大ヒットしたインド映画「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」の舞台化。ハリウッドにならい「ボリウッド」と呼ばれるインド映画界の傑作に準じ、1970年代と現代のインド映画界が舞台。脇役俳優のオーム(紅)は人気女優シャンティ(綺咲)に恋をし、彼女を謀略から救おうとするが、事故死してしまう。その30年後、事故の日に生まれ、オームと命名された男児が、スター俳優になり、時を超えても変わらぬ愛の姿を描く。

 ☆紅(くれない)ゆずる 8月17日、大阪市生まれ。02年初舞台。08年「ザ・スカーレット・ピンパーネル」で新人公演初主演。11年「メイちゃんの執事」でバウ初主演。14年「風と共に去りぬ」で全国ツアー初主演。11月に北翔海莉の後任として、相手娘役に綺咲愛里を迎えて星組トップ。本拠地お披露目は、3月10日に宝塚大劇場で開幕する「-ピンパーネル」。身長173センチ。愛称「さゆみ」「さゆちゃん」「ゆずるん」「べに子」。