助演男優賞の役所広司(61)は、密室撮影の酸欠危機を明かした。受賞作「三度目の殺人」で、主演福山雅治(48)と向き合った接見シーンでのこと。2人は酸素ボンベをくわえながら、白熱のやりとりを撮り終えたという。

 プレゼンターは昨年受賞者の妻夫木聡(37)。年齢差そのままに役所を「芸能界の父」と慕う妻夫木から盾を受け取ると、緊張がほどけたように笑顔を見せた。「映画の中では俳優の力はほんの一部。こうやって賞をいただけるのも作品に恵まれたからです」とベテランらしく謙虚に語った。

 役所は撮影現場にいるだけで、後輩俳優に力を与えている。「三度目の殺人」で共演しこの日、花束を持って駆けつけた満島真之介(28)は「カメラの向こうに行ったときのギャップがすごい。スッと役に入るところはいつ拝見しても勉強になります」と振り返る。

 連続殺人犯を演じた「三度目-」で注目されたのは弁護士役の福山との接見シーン。2人きりの密室シーンで、セットの通気も良くなかった。

 「撮影が続くうちに息苦しさを感じるようになったんです。福山君がコンサートでも体力を燃焼してこういう風になることがある、と。そういうときは酸素を吸うそうで、さっそくセットにボンベを持ち込み、撮影が中断するたびに2人でチューチューしながら続けたんですよ」と明かした。

 是枝裕和監督(55)は当初、映像的に地味な接見シーンを一部にとどめるつもりだったが、2人の熱演を見て作品のメインに据えることにしたという。まさに酸欠ギリギリの闘いだった。

 もう1本の「関ヶ原」では大ぶりの肉じゅばんで肥満体を表現しながら、その姿で全速力で駆けるエネルギッシュな徳川家康像で度肝を抜いた。

 TBS系ドラマ「陸王」の収録が1週間前まで続き、来年は19年のNHK大河ドラマ「いだてん」の収録も始まる。映画でも80年代の広島を舞台に暴力団抗争を描いた注目作品「孤狼の血」が5月公開。それでも「運が良ければ来年もう1本、映画に出たいですね」と意欲は衰えない。【相原斎】