歌手の沢田研二(70)が18日、横浜市内で日刊スポーツなどの取材に応じ、全国ツアーのさいたまスーパーアリーナ公演を開催直前に中止した件の真相を、自身の口で話した。9000人入ると聞いていた観客が実際には7000人だったことや、客席の一部がつぶされていたことなどから、自ら中止を決断したと明かした。この日、ファンには謝罪したが、決断はアーティストとしての「意地」だったという。

閑静な高級住宅街。ちょうネクタイ姿で自宅から出ると、「ここではなんですから」と取材陣を近所の公園に案内した。冒頭「ライブを楽しみに足を運んでくださった方にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。心よりおわび申し上げます」と頭を下げた。

そして、真相をめぐり諸説が飛び交っていた公演中止について「この結論をくだしたのは、意地でしかない。僕自身にさいたまスーパーアリーナでライブをやる実力がなかったということですが、ライブをやる側の人間の位置が守られなかった」と説明を始めた。

同会場は、座席配置の形式によって5000~3万6500人が収容できる。「当初(観客数が)9000人と聞いていたが7000人だったのと、座席(の一部エリア)が死角でもないのにつぶしてあった。リハーサル前にモニターを見て『なんだこれは』となって。最終的に中止は自分で決めた」と明言した。

17日の公演は開場が午後3時半、開演が同5時予定だった。開場時間になっても入り口が閉じたままで、突如「契約上の問題が発生したため、中止とさせていただきます」と書いた紙が張り出され、大混乱した。

中止の知らせが遅れたことについて「少なくとも開場までには言うべきだった」と話した。「だが、事務所もイベンターも『やってください』と頭を下げていました。僕は約束が違うと思っていたし、僕がいたらいつまでも頭を下げ続けるので『だったら帰ります』と午後3時45分には会場を出ました」と続けた。

沢田によるとこれまでの公演でも、観客が少なく「がくぜんとすることもあった」という。「もちろん、僕の実力不足はあります。でも事務所、イベンターには、集客で苦労してるなら言ってくれと話しているし、もっと頑張ってくれ、ライブをやるならいっぱいにしてくれといつも言っている。ファンには本当にすまないと思うが、今後10年音楽活動を続けていくためにも、今回はファンに甘える形となった」と吐露した。

入場料の払い戻し方法などは後日正式発表予定。「もし許されるなら、チケットを持っていてもらい、代替公演に来ていただければうれしいですが、世の中そんなに甘くないとも思っています」と神妙な表情で話した。【川田和博】