今年4月に母校立大の客員教授に就任して、講座「現代社会における言葉の持つ意味」を担当する、フリアナウンサー古舘伊知郎(64)。来月5日には“ロックの聖地”の東京・新宿ロフトで、トークライブ「戯言(ざれごと)」を開く。

古舘は不安のある社会は、保守化すると主張している。【取材=小谷野俊哉、山内崇章】

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今の時代、財政が厳しくなってきて、退職金も出ないし、老後資金が2000万円不足しますよというのが大問題になってて、医療費も何も破綻してるじゃないですか。

年金2000万円不足の金融庁の報告で騒ぐけども、あれの本質は何かっていうと、僕が思うには、医療費が自己負担も含めて、税金も含めて、大手企業の健康保険組合の負担も含めて、会社負担と個人負担の折半も含めて、100兆円超えてるわけですね。医療費が。

医療費が破綻してる。どこに落とすかっていうと、医療を削減して介護に落とそうとするわけですね。介護施設がパンクする、まかないきれない。介護士の方だってつらくてたまらない、給料も安いし重労働だし。そうすると介護も施設がいっぱいだって言って、施設から出して、自宅介護を勧めるわけですよ。

そうすると、今度は介護離職が増えるんですよ。で、介護の離職が増えて働けなくなる、そうすると生活保護に落としこまれるんですね。そういう財政の削り削りが回り回って、生活保護まで回ってるわけですよ。こういう時代になってるんですよね。

だから本当に、政府か言う年金制度の「100年安心」っていうのは置いといて、寿命が延びても、大変な時代になってくると思うんですよね。そういう中の不安感があった時に、非常に、政治のありようも保守化するしね。保守って何かと言うと、今より未来を批判して、今の方がましと思うことを保守という。

リベラルとは何かと言うと、今を批判して、近未来の方がもっと良くなると。こういう考え方でいうと、やっぱり政治に期待しないとか、保守化するとか、今が良ければいいとか、学生もいい会社に入った方が無難だなとか。何がしたいかとか、何が好きだから不安定でもいいと思う前に、そこそこの保証のある会社に入っておかなきゃというんですかね。

僕はあの、最後はコミュニケーションだと思っていて、僕なんか古いかもしれないけど、あえて言うと、人に憧れたんですね。仕事選ぶ時にね。ああいうしゃべり手になりたいとかね。ああいう噺家(はなしか)さんに憧れるとかね、ああいうアナウンサーが好きとかね、ああいう人になりたいみたいなね。

やっぱり自分も人間だから、人間と人間で共鳴し合うんですよ。勝手な共感なんですけど、ああいう仕事に就きたいとか、人を見ちゃうんですね。でも今は、こういうジャンルがいいとか、金融関係が危ないとか、いいとかね。そういう時代になっている。(続く)

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◆古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年(昭29)12月7日、東京都生まれ。立大卒業後の77年にテレビ朝日入社。同8月からプロレス中継を担当。84年6月退社、フリーとなり「古舘プロジェクト」設立。85~90年フジテレビ系「夜のヒットスタジオDELUXE、SUPER」司会。89~94年フジテレビ系「F1グランプリ実況中継」。94~96年NHK「紅白歌合戦」司会。94~05年日本テレビ系「おしゃれカンケイ」司会。04~16年「報道ステーション」キャスター。現在、NHK「ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!」(木曜午後7時57分)司会など。血液型AB。