10月28日に行われた配信ライブをもって、白石麻衣(28)が乃木坂46から卒業した。アンコールのスピーチが印象的だった。

「何もできなかった、普通の、普通の人でしたけど、私をここまで大きくしてくれたのも、たくさんのファンの皆さんのおかげです」

芸能界でも指折りの美貌と白い肌。一見、近寄りがたい印象すらある華やかなルックスには、2度も強調した「普通」という言葉が似つかわしくないようにも思う。ましてや、国民的アイドルグループの大エースだ。女性ファンからは憧れの的で、男性ファンからは「高根の花」かもしれない。それでも、どこまでも「普通」でいた人だった。

小さい頃からテレビっ子で、大のお笑い好き。一方で、「ボンバーマン」などのゲームも得意だ。料理が好きで、得意料理は「お母さんから教えてもらった味の筑前煮。普通の和食が好きです」という。「本当に普通の学生でした」と振り返る。

11年8月に、人生で初めて受けたオーディションに合格して、乃木坂46の1期生に。不安が大きかったが、「せっかくスターティングメンバーで受かったんだから、一生懸命頑張ってみたら」と母親から背中を押され、加入を決断した。

加入初期からファンを獲得し、常にグループトップクラスの人気を誇った。モデルとしても活躍し、ファッションイベントではさっそうとランウエーを歩いた。乃木坂46全体の人気や知名度も上昇を続け、スターダムを駆け上がった。

それこそ普通の人間だったら、浮足だってしまっても無理はない状況だ。それでも、中身は変わらなかった。「あんなに美人で、あんなにキレイなのに、楽屋では無邪気で、飾った様子もないし、優しく話してくれるし、おもしろいし…」。後輩メンバーたちは口をそろえる。

芸能界の成功者が「普通」でい続けることは、言葉以上に難しいのではないだろうか。逆説的だが、それは「普通ではない」ことだと思う。類いまれなルックスと、「普通」でい続けられる人の良さがあったからこそ、白石は特別な存在になったのかもしれない。【横山慧】