兵庫・宝塚大劇場で8月7日に開幕した雪組公演「CITY HUNTER-盗まれたXYZ-」「Fire Fever!」。新トップに就いた彩風咲奈が、相手娘役に朝月希和を迎えた新コンビで本拠地お披露目に臨んでいる。宝塚は9月13日まで、東京宝塚劇場は10月2日~11月14日。

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いまや、雪組トップの彩風、初めて取材したときはまだ研4(入団4年目)だった。新人公演3作連続主演が決まっており、作品は「ロミオとジュリエット」。当時トップ音月桂の本拠お披露目作だった。その取材での印象は「八重歯がチャームポイント」。まだまだ初々しさ、かわいらしさが大半を占めていた。

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彩風は07年、93期の首席で入団。配属当時のトップ水夏希から音月桂、壮一帆、早霧せいな、望海風斗と雪組で5人のトップの背を見てきた。

抜群のスタイルと首席ならではの勤勉さで、下級生時代から抜てきが続いた彩風。水の退団公演、音月のお披露目及び退団公演など、時のトップ節目作の新人公演に主演した。

さらには、退団や組替えになる上級生が本役だったこともあり「私は皆さんが残していかれるものをしっかり覚えて、吸収して、後輩に伝えていこうと」などと話したこともあった。

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雪組の歩みをしっかり目に焼き付け、歩んできた。望海風斗・真彩希帆、早霧せいな・咲妃みゆ-など互いに認め合い、高め合うトップコンビが続いており、彩風もこの道を継承するようだ。相手娘役に迎えた朝月とは「切磋琢磨(せっさたくま)しながら進みたい」とも語る。新コンビで、世代交代が進む雪組をけん引し、理想とする道へ-。

「思えば、早霧さんの時代になった時は研究科8年、新人公演を卒業したところだったと思う。そのときに、ルパン三世の次元大介役で(大劇場公演の)ポスターに載せていただくなど、責任ある立場をいただいた」

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今作のインタビューでそう述懐しながら、当時の自分と比べ「今の子たちはなんてしっかりしているんだろう」とも言って笑った。

彩風はかつて、宝塚音楽学校時代はダンスへの苦手意識があったと話していた。その克服へ、より時間を割いたとも語っている。子供の頃の勉強もそう。苦手な数学を集中的に勉強したという。自分の弱い部分を磨いてきた、己に厳しい人。その背を見た今の下級生たちに必ず、いい影響があるはずだ。

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言うまでもなく、トップスターは各組に1人だけ。それゆえ、歌、ダンス、芝居の技量や、衣装の着こなし、舞台での立ち姿などの「男役芸」といった求められる資質は多い。が、中でも重要なのは「人格」「人間性」といわれる。

役柄を演じる上で、舞台上から、人間性もあふれ出る。それ以上に、覚悟が問われる。各組70人以上いる組のメンバーには個性も思考も多様な人がいる。その全員が同じ方向へ向けるよう、指針となるべき背、道を示さなければならない。

その重みが、大羽根の重みでもある。すでに全国ツアーで、その重みは経験した。ただ、大階段での大羽根には70人超の組メンバーを従える責務がのってくる。その重みに耐え、日々強くなっていくはずだ。彩風が導く道の先にはどんな景色があるのか。期待しかない。【村上久美子】