1カ月ほど前に、タレントの大竹まことさん(72)を取材させていただいた。毎週、日曜日に日刊スポーツの芸能面に掲載される「日曜日のヒロイン」に付ける縁(ゆかり)の人のコメントだ。

所属事務所「ASH&Dコーポレーション」の後輩であるお笑いコンビ、阿佐ヶ谷姉妹のおふたりにメインで登場していただいたのだが、大竹さんに先輩として、2人について話を聞いた。

メインの阿佐ヶ谷姉妹に撮影込みで1時間ほど話を聞いて、原稿は250行ほど。で、縁の人のコメントは20行ほど。「ほんの5分で結構です」と言ってお願いしているが、1分も話してもらえば十分だ。直接会って話を聞くこともあれば、電話、あとは書面でもらうこともある。200行のメイン原稿も、20行のコメントも、アポイントメントを取る手間はたいして変わらず、仕事が詰まっている時などは、ちょいとストレスを感じてしまうこともある(笑い)。原稿の締め切りは掲載1週間前の日曜日だが、阿佐ヶ谷姉妹の場合は、正月明けで変則になったこともあって、締め切りをすぎた月曜日の取材となった。取材したら、すぐに原稿を書いて出稿する“取って出し”だった。

阿佐ヶ谷姉妹の取材は、2人が月曜レギュラーを務める文化放送「大竹まことのゴールデンラジオ」(月~金曜午後1時)の生本番前に行った。本番開始1時間前の午前11時から、お姉さんの渡辺江里子さん(49)と妹の木村美穂さん(48)のコメントが、後で録音を聞いた時にどっちがどっちだか分からなくならないように、気をつけながら話を聞いた。

その後、大竹さんには正午からの番組打ち合わせの後に話を聞くことになっていた。打ち合わせは40分ほど続き、生本番まで20分を切って終わった。大竹さんは「ちょっとタバコを吸ってくるから」と喫煙所に行き、残り15分を切ったところで戻って来た。

紙面の原稿量は12文字を20行。話せばアッという間だ。阿佐ヶ谷姉妹について、話を始めてすぐに「時代の流れに、あいつら2人がマヨネーズみたいに絞り出されていたと思ってるけどね」という“おいしいフレーズ”をいただいて、あとは流れのままに話を終わらせるだけ。紙面に掲載できない分はネットに載せればOKだ。

ところが、淡々と語る大竹さんの話が終わらない。阿佐ヶ谷姉妹が生まれた時代背景から話して、アラフィフで一緒に暮らす女性コンビについて解説してくれた。そして「三丁目の夕日」みたいな世界が広がっているのが、年寄りは郷愁だし、若人たちは憧れみたいなのがあるんじゃないのと結んでくれた。

本番まで5分を切ったところで、大竹さんはひょうひょうとスタジオに入っていった。一緒に行った同僚が「ちょっと押したんで、ドキドキしましたよ」と笑っていたが、無事に取材終了。あとは原稿を書くだけだ。

昔だったら、200行であろうが、1000行になる連載であろうが、インタビューは全て手書き。録音機を使うのは、スポーツ紙といえど新聞記者にとっては恥だという風潮があった。ところが今は、ICレコーダー全盛時代。記者もメモする手が寄る年波で早く動かなくなったのでAIの録音機を使っている。8割くらいの確度で文字起こしして、ネットで送ってくれる。

大竹さんと阿佐ヶ谷姉妹の生本番をスタジオで聞いて、すぐに文字起こしから原稿書きに取りかかった。大竹さんの話は正味7、8分くらいだ。ところがAIが文字起こししたものを正確に文章にしてみると、なんと150行ほどになっていた。あと50行でメイン原稿の本文ができる。出来上がった文章を読んで、大竹まことという芸人のすごみを改めて感じた。

今から40年前、日本テレビで大竹まこと、きたろう、斉木しげるのお笑いトリオ、シティボーイズがシュールなコントで「お笑いスター誕生」で10週勝ち抜きを果たしてグランプリに輝いたのを見ている。大竹さんは、その後はピンとしても司会、暴走キャラ、そして98年から続くテレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」では知性を感じさせるコメントを発している。

07年に始まった「ゴールデンラジオ」では、穏やかなしゃべりで共演者の持ち味を引き出している。この番組のリポーターから1人前に成長したタレントも多い。大竹さんのことも、丸くなって、いい年の取り方をしているなと思っていたが、大きな勘違いだった。いざとなれば、まだまだ迫力十分、あのシュールで狂気を秘めた芸人・大竹まことは健在。そう思い知らせてくれたコメント取材だった。【小谷野俊哉】