4月11日から民放5局のテレビ番組のインターネット同時配信(リアルタイム配信)が始まった。昨年10月に日本テレビが先駆けて始めていたサービスで、これでキー局全てが出そろう形に。視聴者は公式配信アプリ「TVer」を使い、パソコンやスマートフォン、タブレットなどでゴールデン・プライム帯を中心とした番組を見られるようになった。

5局のうち、画期的な宣伝を打ち出したのがテレビ東京だ。サービス開始に合わせ、10日の日本経済新聞には「全国放送っぽくふるまっていた件に関してのお詫び」としたユーモアあふれる全面広告を掲載。キー局のひとつながら全国放送されていなかった事実を自虐し「他の全国放送と同じような雰囲気を醸し出していました。背伸びをしていました。テレ東は、全国で放送していません。今さらですが、すみません」と謝罪文をつづった。

広告ではその上でリアルタイム配信開始を知らせ「もう背伸びをしなくていいんだ!全国の皆様にリアルタイムでお届けできるんだ!そんな喜びから、こんな豪華な広告枠まで買ってしまいました」と笑いを誘った。テレビ東京によると、今回の試みには「予想以上の反響があった」といい、ツイッターで行った記念キャンペーンでは「#テレ東見れない」がトレンド入り。「SNSや各メディアも面白がって好意的に受け止めてもらえたことをありがたく思っています」と喜んだ。

広告などの施策は社内プロモーションチームのアイデア。同局は「見られない地域も多いテレ東ならではのクリエーティブ(演出)でしたが、リアルタイム配信サービス全体のPRにもなったのでは」とコメントした。

テレビ東京はバラエティーからドラマ、ニュース、アニメまで約30番組を配信予定。リストには「YOUは何しに日本へ?」「モヤモヤさまぁ~ず2」などのバラエティーをはじめ、「WBS(ワールドビジネスサテライト)」や「ガイアの夜明け」などの経済系番組、アニメは「ポケットモンスター」「妖怪ウォッチ」と人気作がズラリと並ぶ。狙いについては「利便性を高めてテレビコンテンツ、テレ東のコンテンツに接触する機会を増やすこと」だといい「リアルタイム配信・追っかけ再生をきっかけに、見逃し配信やアーカイブなど配信全体の利用拡大と、テレビ視聴への回帰や周辺ビジネスの拡大にも期待している」とした。

同局によると、開始から2日が経過したリアルタイム配信の視聴数は「まずまずの数字」だったという。昨今はYouTubeやNetflix(ネットフリックス)などが台頭し、16年にはテレビ朝日がサイバーエージェントと動画配信サービス「AbemaTV」を開局。NHKも20年から受信契約者向けに番組の同時配信サービス「NHKプラス」を開始した。テレビと配信、2軸での取り組みは今後もしばらくは続いていきそうだ。【松尾幸之介】