先月8日に死去したエリザベス女王の治世を題材にしたネットフリックスの人気ドラマ「ザ・クラウン」のシーズン5で、昨年死去した女王の夫フィリップ殿下の不倫疑惑が描かれていることが分かった。フィリップ殿下と長年親交があったビルマのマウントバッテン伯爵夫人こと、ペネロペ・ナッチブさん(69)との親密なシーンが登場すると英サン紙が報じたもので、女王の元報道官は「残酷な駄作」と批判している。

ナッチブさんは、79年にアイルランド共和軍暫定派の仕掛けた爆弾で亡くなった殿下の最愛の叔父ルイスマウントバッテン卿の孫であるノートン・マウントバッテン氏と結婚しており、遠い親戚同士の関係になる。2人の挙式には殿下と女王も出席し、新郎の友人であるチャールズ皇太子(当時)がベストマンを務めた。殿下は5歳の末娘をがんで亡くしたナッチブさんをサポートしていたと言われ、2人は馬車競技を通じて親交を深めていったことで知られる。

2019年には当時97歳の殿下が自ら馬車の手綱を握ってウィンザー城の敷地内でナッチブさんと散歩を楽しむ姿が目撃されたこともあり、その親密ぶりから30歳年下のナッチブさんに対し友情以上の感情があるのではないかと、度々メディアで不倫疑惑が報じられてきた。

王室は2人の関係に関する憶測を否定しており、女王の死去後すぐに別の女性との親密なシーンが描かれていることに怒りをあらわにしている。報道によると問題のシーンは、殿下が自身の結婚生活についてナッチブさんに打ち明ける場面で手が触れるというもので、スキャンダラスな描写ではないともいわれているが、女王が死去した直後のタイミングだけに批判が噴出している。王室専門家も、女王が殿下の隣に埋葬された直後に家族の友人との親密なシーンが描かれることは残酷だと述べており、チャールズ国王の友人はドラマは「搾取的」だと述べ、評判を台無しにすることに何ら良心の呵責(かしゃく)がないとネットフリックスを批判している。

同ドラマはエリザベス女王の激動の半生を史実に基づき描いた歴史ドラマだとされているが、シーズン4でもチャールズ国王とダイアナ元妃に関する描き方について「フィクションと現実を混同する可能性がある」と批判を浴びたことがある。ネットフリックスは女王の死去を受け、シーズン5の配信を延期することを検討していたというが、予定通り11月9日に配信されることが発表されている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)