昨年末、武田鉄矢(73)をインタビューした。「母に捧げるバラード」「贈る言葉」など数々のヒット曲を生んだ3人組の海援隊としてデビューして、50周年の年だった。いろいろなエピソードを話してくれたが、武田の代名詞とも言える「金八先生」への思いが印象的だった。
「金八先生」とは、武田が79年から32年間にわたって演じたTBS系の大ヒットドラマシリーズ「3年B組金八先生」である。最高視聴率は39.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、民放ドラマ史上歴代8位の記録である。他にも30%台の視聴率の回は数多くあった。昔かたぎの教師が生徒らのさまざまな問題に真っ向から立ち向かい、触れ合うドラマである。
第8シリーズ(スペシャル、ファイナルなどは除く)まで制作され、生徒役からは数多くのスターが生まれた。杉田かおる、鶴見辰吾、たのきんトリオ(田原俊彦、野村義男、近藤真彦)、小林聡美、三原じゅん子、伊藤つかさ、川上麻衣子、柳葉敏郎、浅野忠信、萩原聖人、森且行、長野博、亀梨和也、本仮屋ユイカ、上戸彩、中尾明慶、濱田岳、高畑充希…。第5シリーズで兼末健次郎役を演じた風間俊介は、第3回日刊スポーツ・ドラマグランプリ新人賞を受賞。また第7シリーズの「金八トリオ」(薮宏太、八乙女光、鮎川太陽)も第8回日刊スポーツ・ドラマグランプリの新人賞を獲得した。ジャニーズ事務所社長の藤島ジュリー景子氏も、第1シリーズに生徒役で出演している。
武田は「(金八先生は)決してもうやり飽きたということはありません。ご要望があればいつでも。ただ俳優というのは、それをやってくださいと言われて動く職業ですから」と話した。そして「今も時々(金八先生の)夢を見るときがありますよ。東日本大震災で被害を受けた中学校に行って、地味ながらコツコツと授業をやっているような、そんな物語ができたらいいな、とか」とも話した。
「金八先生」のファイナルは東日本大震災が起きた直後の11年3月に4時間スペシャルで放送された。金八先生は定年を迎え、金八先生を送る『卒業式』には、卒業生150人以上とかつての同僚教師らが出演した。まさにファイナルの内容だったが、武田はそうは思っていない。
「記者さん、私にとって、金八先生は結びの仕事なんでしょうね。やんなきゃいけない仕事なんでしょうね。多くの方がまだ金八どうのこうのとおっしゃってくださるんですものね。例えば海外に行って、日本語を教えているとかね(笑い)。『金八先生、最後の授業』なんて、タイトルだけで見たくなりますよね(笑い)」。
ドラマの中で、不登校、いじめ、学級崩壊、性同一性障害(GID)、薬物問題などさまざまなテーマを扱ってきた。ファイナルの放送から12年。新型コロナウイルス感染症、ロシアのウクライナ侵攻など、混沌(こんとん)とする社会に、金八先生ならどんなメッセージを送ってくれるか。「最後の授業」が楽しみである。【笹森文彦】



