男女4人組バンドの緑黄色社会が、フジテレビ系ドラマ「真夏のシンデレラ」(月曜午後9時)の主題歌&挿入歌を務めている。
主題歌「サマータイムシンデレラ」は、各配信チャートで上位にランクインする“今年のNo.1夏ソング”だ。このほど日刊スポーツの取材に応じ、同曲や今後の目標などについて語った。【聞き手=佐藤勝亮】
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ボーカル長屋晴子(28)が放つ切ない歌声が、毎週月曜午後9時に彩りを与えている。グループ初の「月9」主題歌が決定し、ほぼ毎週リアルタイムでドラマを見ているという。
長屋 お話を聞いた時は、やっぱり「月9」という響きが自分たちも憧れていたものであったので、すごいうれしかったですね。同時に「月9」という枠は誰もが見たり、話題に上がるのでプレッシャーもありました。
主題歌「サマータイムシンデレラ」は、夏の舞台をテーマに制作したラブソングだ。ドラマ側との話し合いを重ね、夏と恋愛の“王道”を意識して楽曲を製作した。
長屋 歌詞は今回に関しては台本を結構読んで、内容に寄せることを意識しました。とはいえ、自分の中にあるものしか出てこないと思うので、実体験だったり、自分の理想だったり、思いみたいなものはすごく入っています。
タイアップが決まってから、台本を熟読。複数楽曲を提出し、主題歌が決定したという。提出楽曲の1つ「マジックアワー」も挿入歌に起用された。主題歌&挿入歌をダブルで担当することになった。
小林壱誓(27) 「マジックアワー」も主題歌として元々作った曲です。僕はあんまりアクティブじゃないんですけど、ドラマも恋愛系だし、夏だしっていうので海に行きました。
思いを込めて製作した「サマータイムシンデレラ」は、初動でバンド最高のストリーミング数を記録するなど、反響も大きい。
長屋 チャートとか見たりしていると、今までに出した曲と違う動き方をしているなって思うし、友達から連絡が来たりするので、実感もわきますね。壱誓は毎日(チャートを)見ていて、言ってくれるから私はそれを待っています(笑い)。
小林 日課がチャート眺めになっている(笑い)。僕くらいじゃないですかね、毎日見ているのは(笑い)。
peppe(27) MVの100万回再生までのスピードもかなり早かったですね。チャートと同じような動きをMVもしてくれていて、数字だとわかりやすいですね。
穴見真吾(25) MVが相当良くね、できあがって。大満足です(笑い)。
スタートダッシュを決めたが、“ヒットの法則”はまだわからないという。
小林 基本的には全曲、自信を持って出していますけどね。
長屋 後でついてくるんですよね。それこそ(昨年の紅白でも歌唱した)「Mela!」とかって、私たちの楽曲でいうとすごい聞いてくださっているなっていう実感は今ではあるんですけど、出した当時とか「めっちゃバズるだろうこれ」っていう感じでは出していないというか。自己満みたいな感じで出していて、結果が後からついてくるみたいな感じだよね。どの曲もそうだよね。
小林 「サマータイムシンデレラ」に関しては、今までにないくらい不安だったよね。
長屋 そうだね。いろんなプレッシャーがあったり。もちろん私たちのエッセンスも加わっているんですけど、いろんな要素も加わっているからこそ、どういった反応になるんだろうみたいな、そういうものもありましたね。
メンバー全員が楽曲製作能力を持ち、楽曲によってメンバー全員で製作したり、数人で製作したり、自由に組み合わせられる。決まり事はあるのか。
長屋 タイアップとかのお話があったりとか、普通に自由に作る時とかも、基本はおのおので作ることが多いですかね。内容次第というか。こういうテーマだったら、この組み合わせが合うんじゃないかっていう話をしたり。ケース・バイ・ケースですね。でもメンバー間で遠慮は何もないです。
小林 曲作りに関しては遠慮したら後悔しかしないですからね。
昨年は結成10周年で初の「NHK紅白歌合戦」へ出場や、初の武道館ライブなど、メモリアルな1年になった。
長屋 去年は本当に緑黄色社会の歴史の中でも、年表には赤文字で絶対書かれて、テストには出るような年だったなって思いますね。わかりやすく武道館、「紅白」というのがあって。自分たち的にもすごく実りあるというか、すごく駆け抜けたなという1年でしたね。去年の葛藤だったり実りがあったからこそ、今年があるとも思います。紅白は私はすごい楽しかったですね。私たちが歌っている後ろで、もう名だたるアーティストさんたちがいらっしゃって、それが楽しかったですね。
穴見 僕的には厳しいものが(笑い)。お世話になっているKing Gnu先輩がいたりとか、ご飯に行っている人が後ろで見ているってやばいですよね(笑い)。途中で忘れないとと思って、頑張って忘れていましたけど(笑い)。
強みは…。
小林 長屋の歌の魅力を語ってくださる方が多いですね。僕らバンドとしては、個性がないのが逆にオリジナリティーにつながっているなって最近思うようになってきて。他に被る人がいないというか。
長屋 多分、私みたいなタイプのボーカルで、バンド形態ってなかなかないと思うんですよ。結構パワフルだって言われることが多いんですけど、そういう女性ボーカルでバンド形態って最近だといないのかな? そういう意味では珍しいのかなって思いますね。
名前には強いインパクトがある。学生時代に長屋が飲んでいた「緑黄色野菜」のジュースを、他のメンバーが「緑黄色社会」と聞き間違えて、現在のバンド名になった。
長屋 そうですね。そういう意味では確かにインパクトがあるというか、忘れないのかなって思いますね(笑い)。でも特に意味はなくて、緑黄色な社会にしたいとか、そういうものではなかったですね。
小林 自分たちはもう変えられないので、自分たち以外のところで個性を出そうと頑張ってるみたいな(笑い)。
今、バンド名を変えられるならどうするのか。
小林 もう1回やり直すなら違うかも(笑い)。
長屋 そうだよね。この名前になったのも間違いがきっかけだったので、ちゃんと考える前に決めちゃったんですね。人生においてバンド名を決めたことがなくて(笑い)。
小林 今だったら(目の前にある紙コップを指さして)「SONY紙コップ」とかね(笑い)。
長屋 正直そもそもの結成もね、こんなバンドにしたいっていうっていうのがなかったですよ。ただバンドを組みたいっていうだけで集まったバンドだったから、意外とバンド名にこだわりもなかったのかもしれないですね。
そんなバンドも昨年で結成10周年を迎えた。その秘訣(ひけつ)は。
長屋 このメンバーだったからだなってすごく思いますね。みんなすごい優しいんですよ。本当に人がいいというか。多分同じクラスにいたらもちろん仲はいいんだけど、同じグループにはいない4人なんですよ。でもやっぱ、違うからいいっていうのもあるし、みんなすごい寛容的だったりとか、個性的だったりとか。やっぱり人がいいからこそ、違うものを持っていても一緒にいられるっていう。
小林 実際この3人(穴見以外)は高校2年で同じクラスになったことがあるんですよ。バンドを組んでいたけど、違うグループにいたよね。
穴見 みんなまじで優しいよね。
結成以来、ライブ会場の規模を毎年更新してきた。今年の12月からは初のアリーナツアーを行う。その先は何を目指すのか。
長屋 アリーナの次は、やっぱりドームを目指したいってなってきますよね。どんどん大きくなっていきたいから。あとは今あえて、小規模なライブハウスでもやってみたい。もっと近い距離感でとか、そういう思いもあります。
小林 でも2回目のアリーナツアーで、今度はすごい簡素なセットでもやりたいよね。
peppe 外のスタジアムでもやってみたいんですよね。
長屋 分かる~! 空が見えるからこそのセットリスト、演出とか景色とかもあると思うしね。
今後はどんなアーティストを目指すのか。
長屋 ずっと『国民的』っていうワードを掲げながらバンドをやってきたんですけど、お茶の間に近い存在になっていきたいなって。皆さんの生活に溶け込んでいきたいというか、当たり前になりたいというか。何かそんなバンドになれたら、本望だな。私たちのずっと掲げてきた夢がかなうというか。いつ達成するのか、達成ってあるのかわかんないすけど、ずっと突き詰めてると思うので。そうなったらいいな。
小林 どんなイメージを持たれたいかというと、ぼんやりとしたイメージしか浮かばないのが「国民的バンド」だなって、なんとなく思うんですよね。「このアーティストはこうだ」って言える人たちって、意外と国民的バンドにはいない気がしていて。ぼんやりとしたイメージしか浮かばないけど、あの人たちは絶対に国民的バンドだみたいな存在になれたらいいなと思います。
穴見 僕が思うにこの4人って、めっちゃすてきな人たちなんですよ、僕を含めてね(笑い)。だからシンプルに、僕たちのことを知らない人全員に知ってほしいっていう気持ちで、まずは届く曲を書き続ける。で、書き続けて知ってもらった上で、よりお客さんと密接にコミュニケーションをとるために、どうしたらいいのか。それはその時に考えたいですね。今はとりあえず、知ってもらうために猪突(ちょとつ)猛進ですね。
peppe チャンスって少ないので、これからもその少ないチャンスをものにしていきたいですね。国民的アーティストの方々が20周年、25周年を迎えられて、そのたびに『私たちはまあ10周年か』と思うので、私たちも20周年とかを迎えられたら良いなって思います。
○…今月2日、サザンオールスターズ桑田佳祐(67)が、日本テレビ系「news zero」内のインタビューで、緑黄色社会の音楽を聞くと話した。長屋は「まさかでしたね。まず、桑田さんのような皆さんが知っているような方でも、音楽をチェックしているのがステキだなって。以前、桑田さんがラジオで私たちの名前を出してくださったんですけど、そこから時間が空いても名前を出してくださったり、先日『ミュージックステーション』でご一緒できた時もお話をさせていただいたり…。すごくうれしかったです」
◆緑黄色社会(りょくおうしょくしゃかい) 愛知県出身の4人組バンド。愛称「リョクシャカ」。高校の同級生だったボーカル長屋晴子、ギター小林壱誓、キーボードpeppeと、小林の幼なじみで、ベースの穴見真吾によって12年に結成。13年から活動を本格化させ、以降、音楽チャートで1位や、多くのCM、アニメ、ドラマなどとタイアップを果たすなど、人気を集める実力派バンド。