小児がんへの理解を深めてもらうためのイベント「ゴールドリボンナイター」が9月2日に東京・神宮球場の「ヤクルト×阪神」で行われる。9月の「小児がん啓発月間」に合わせた開催で、小児がんの子供のと家族計50人を招待する。主催のヤクルト球団に協賛する、認定NPO法人キャンサーネットジャパン(CNJ)の理事を務めるフリーアナウンサー中井美穂(58)は、95年にフジテレビを退社後も幅広い活動を続けている。【聞き手=小谷野俊哉】

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TOKYO MX「宝塚カフェブレイク」のMCを務めるなど宝塚通で知られるが、歌舞伎、ミュージカル、小劇場までありとあらゆる舞台に足を運ぶ。1年間に見る舞台は250本にも及ぶ。

「なんでそんなに多く見るかというと、読売演劇大賞の選考委員をやらせていただいているんです。もう10年目ぐらいたつんですけど。選考委員をやらせていただくということは、それだけ多くの演劇を見ないと選べません。いろいろ見せていただいているうちに、年間250本から300本ということになっていました。選考委員の方は、多かれ少なかれ年間200本ぐらいは、皆さんご覧になると思います」

映画鑑賞が映画館に行くだけでなく、ネットの進歩に伴って配信、パソコン、スマホでも出来るようになった。その一方で演劇は、変わらないままだ。

「でも、その不便さって言うんですかね。わざわざチケットを買って、時間をつくり劇場まで行って、皆さんが作り出す演劇空間、その世界観に何時間か身を浸して帰って来るという経験。普通では味わえない経験を、2時間や3時間で味わわせてもらえる貴重な体験だと思います。コロナ禍があったから逆に、こうやって見ることができること自体が貴重ですね。配信もずいぶん発達して、数多くの人が演劇を楽しめるようになりました。どうしても東京や大都市に集中しているので、他の地方にお住まいの方がなかなか見ることができなかったのが、配信で舞台を見る機会ができたのすごくいいことだと思います。でも、やはり情報量が全く違うので、配信で見ても、どこかで何年後かでもいいですけど、また生で演劇を見る体験をしてほしいですよね」

演劇を見ることは、スポーツ観戦と共通するものがあるという。

「演劇はスポーツと非常に近い感激を、味わうことができます。自分がやるわけではないんですけれども、やっぱり生で見ることによって、文字にできない、数値化できないものをもらって帰るわけで、スポーツもそうですよね。汗とか光る肉体とか、転んだ時の音とか、ハードルに足が当たる音とか。並んだ時の競技場が、あんなに騒いでたのに急に本当に無音になる、あの瞬間とか、あらゆることの情報が、体の中に染み込んでくる。それは演劇も一緒で、それを体内に取り込ことがゾクゾクしますし、ワクワクします。自分ができないことをやってる人たちへのリスペクトは、すごく大きい。お芝居であっても、スポーツであっても一緒ですね。お芝居は、コロナ禍という大変な時を乗り越えて、今また、そういうものが戻ってきました」

コロナ禍を乗り越えられても、失ったものは大きかった。

「大道具さんとか、実際に配信とかができてれば、まだ仕事あったかもしれない。でも、衣装さんとか照明さんとか、そういう技術的な人たちの技術の伝承がうまくいってないんですよね。コロナ禍に経験できないまま辞めていった人もいっぱいいますし。今、いざこういう環境が戻ってきたといっても、もうスタッフが辞めている、制作さんが辞めているっていうことが多かったりもします。俳優さんもそうですけど、あるひと握りの人たちは、復活できますけど。体力がね、どこまでもつか。今年ぐらいまでは、なんとなく中止になった分をまたやりますよと頑張れてたりするんですけどね。小劇場の話を聞くと、ここから先は、もうちょっと芝居を打てないかもしれないとか。コロナの時に、1年後とかの計画の部分が止まっちゃってましたからね」

それでも、エンターテインメント、スポーツの世界を、愛情を持って見つめる。

「そういうことを乗り越えて頑張っていかなくてはいけない。スポーツであり、エンターテインメントの力ってそういうところにあるのかなって。自分が、それに少しでも役に立ちたいという気持ちがあります。せっかくアナウンサーという仕事を、ずっと長い間生業としてやらせていただいているのでね。医療に関してもそうですし、エンターテインメントに関しても、スポーツに関しても、そういう培ってきた知識とか技術とかを伝えていきたいですね」

(終わり)

◆中井美穂(なかい・みほ)1965年(昭40)3月11日、東京都出身。87年に日大芸術学部を卒業後、フジテレビにアナウンサーとして入社。88年に「プロ野球ニュース」土・日曜のメインキャスター。89年に連続ドラマ「同・級・生」にレギュラー出演。95年に当時ヤクルト在籍中だった、野球評論家古田敦也氏(58)と結婚し、フリーに。97年のアテネ大会から22年のオレゴン大会まで、13大会にわたりTBS「世界陸上」中継のメインキャスターを務める。22年に日本陸上競技連盟から特別表彰。13年から読売演劇大賞の選考委員を務める。現在はTOKYO MX「宝塚カフェブレイク」MCなど。血液型O。