成田凌(29)が主演、小芝風花(26)がヒロイン役を務めるカンテレ制作フジテレビ系連続ドラマ「転職の魔王様」(月曜午後10時)の最終回が25日に放送される。関西テレビの萩原崇プロデューサー(40)がこのほど、最終回の見どころについて語った。連載最後となる第3回は、成田演じる「キャリアアドバイザー」の在り方、描き方について明かした。【聞き手=高橋洋平】

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成田演じる“最恐毒舌”キャリアアドバイザー来栖嵐(くるす・あらし)は厳しい声を投げかけながらも、真摯(しんし)に求職者と向き合っていく。

「もともと転職って誰しも考えたことはあると思いますけど、転職することへのハードルがこんなに下がってきたのって、やっぱり最近のことかなと思います。実際に自分はキャリアアドバイザーさんのお話を聞いたことはなかったので、実際にやっている方の話も聞いたりしました。その方たちは、決して担当する人を動かすというか、操作するような思いではなく、学校の先生でもないし、子どもを教えてるわけではないので、やっぱりその人の決断を手助けするというスタンスは忘れないようにしてます、と話していました」

転職がすんなり決まるほど、現実社会は甘くない。エンターテインメントとドラマとしてのリアリティーの共存を追求した。

「実際の転職成功率は10%ぐらいというお話を聞いて、簡単に転職って楽しいだけじゃないんだなというのをつくづく思いました。このドラマもやっぱりみんながみんなハッピーエンドでよかったねっていう感じより、割とリアリティーを見せられるところはしっかり見せて、と。そういう意味では、とても気楽に楽しく見てよかったっていうよりか、ちょっと見ててつらいって思う部分がいっぱいあったんだろうなと思ってはいるんですけど、そのトーンになってもいいかなって思ってつくっていたっていう感じですね」

リアリティーを追求したからこそ、深みが出てくる。

「自分もそうですけど、人生そんなに楽しいことばっかりじゃないじゃないですか。そういった意味で、やっぱり実際に悩む人たちの場面っていうのをしっかり見せないと、見てる人がちゃんと説得力を感じてもらえないと思いました。『つらいわー』『分かる!』って思ってもらえるまでのキツさはドラマだからこそ、都合よくいいところだけとかにならないように気を付けました」

第10話では、嵐の鋭い観察眼が問題解決に導いた。求職者の「帰宅後、子どもの寝顔を見るのが楽しみ」という言葉から、帰宅時間が遅いなどの家庭内不和を見抜いた。

「あのシーンはその話を担当してくれた作家さんが男性の方で、実際にお子さんがいらっしゃって、体験としてあったみたいです。それは絶対使えますねと。最初聞いた時にも、子ども思いで一生懸命働いて遅くまで頑張って帰ってきて、それでもちゃんと子どもの顔を見て家族思いのいいお父さんだなって自分も思っちゃいました。ただポイントはそこではなくて、実は家族と一緒に過ごすという時間を大事にする部分は抜けているという目線は、実際の体験から生かせた話でした」

求職者の面談シーンにも、こだわりがあった。

「このドラマって、同じように悩みを抱えている人たちが、いきなり会った日に面談をしていく場面がとても多くて、一見すると地味というか、事件ものとか推理ものと違って、殺人事件が起きるとかっていう話ではない。じっくり話をする場面を魅力的にするにはどうしたらいいかっていうのは、みんなで話し合いました。その中ではちょっと推理じゃないですけど、人って100話すことってないよねっていう。やっぱりプライドもあるし、いきなり会った年下のキャリアアドバイザーにいくら転職相談だからといって、自分の恥ずかしいところをきっと全部明かせるわけじゃないよね、とか。都合いい方に人って解釈して言っちゃったりするよねっていうのを、そこの真相とか真実を見つけていく。そこの部分は本当に事件もの、推理ものをつくる感覚で。見てる人が気付かなかったけど、そういう意味だったんだって、(1話の中の)後半になって、会話劇になるようにしたいねというのはちょっと話をしていました」

ともすれば、面談シーンだけになりそうな展開にもアクセントを加えた。

「原作は面談の場面がメインのつくりになっていたので、ドラマとしてはそこだけにとどまらずお出かけをして会いに行ってというのは、リアリティーでいうとあまりないんじゃないかということはもちろん分かってはいます。でも面談で話を聞いたその先の真実や真相をつかむのに必要なものがあるって考えたからこそ、動くんだっていう行動の論理が通れば、決して絶対にないことではないんじゃないかっていう思いでつくっています」

全11話それぞれに求職者が登場する。嵐たちによる求職者の問題解決がストーリーの縦軸となり、全話を通じて描かれる嵐と千晴の関係性の変化が横軸となる。

「1人1人の悩みは単独のお話なので、いろんな時代の中で挙がっているテーマ、題材を生かせるかと思っていました。全11話をずっと連続して見てもらえるための工夫っていう意味でいうと、やっぱりそこは主人公とヒロインの関係性がどうなっていくのかということと、主人公に一体何があってこういう人物になっているのかということを、興味を持って見てもらえるものにしなきゃいけない。だから分かりやすく恋愛要素を入れたっていうことではなくて、あくまで最後までこの2人の関係がどう変わっていくのかっていうのが、すごく人と人とのつながりという部分がこのドラマの中でとても大事だと思っていたので、そこの関係をどう進めていくかというのが一番。千晴の目線は視聴者の目線でもあったので、千晴がどうしていけば、だんだん主人公のことを思っていく気持ちが深まっていくのかなっていう。そこが全話を通してつなげていくポイントであったかなと思いますね」(おわり)

◆萩原崇(はぎはら・たかし)1983年(昭58)1月19日生まれ、山梨・北杜市出身。立命館大卒業後の05年に関西テレビ入社。14年からドラマ制作に携わり、「シグナル 長期未解決事件捜査班」(18年4月期)、「彼女はキレイだった」(21年7月期)「合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~」(23年4月期)などを手がけた。

◆転職の魔王様 同局系初主演の成田が演じる“最恐毒舌”キャリアアドバイザー来栖嵐は、左足が不自由でつえを突いている。求職者の心をへし折るような毒舌を放つため「転職の魔王様」という異名を持つ。仕事や生き方への悩みを痛烈な言葉で一刀両断しながらも、働く自信と希望を取り戻させる“転職”爽快エンターテインメント。小芝はヒロイン役の未谷千晴を演じる。成田と小芝とは初共演となる。原作は額賀澪氏の同名小説。