2024年度の第29回「新藤兼人賞」授賞式が6日、都内の如水会館で行われ、今年の日本映画界を席巻した「侍タイムスリッパー」の安田淳一監督(57)が銀賞を受賞した。
新藤兼人賞は、日本映画の独立プロ57社によって組織される協同組合日本映画製作者協会が、本年度公開作品の中から将来性のある新人監督と、優秀な作品の完成に貢献を果たしたプロデューサーや企画者を選出し、授与する。57歳での新人監督賞受賞に「監督が11役兼ねた、自主映画丸出しの作品を選ばれたことに感謝。思えば、言いたいことはたくさんあるが…僕、57歳ですけど、まだまだ前途ある方とここにいられるのが、うれしい」と満面の笑みを浮かべた。
「侍タイムスリッパー」は、主演の山口馬木也(51)演じる会津藩士の武士・高坂新左衛門が、落雷によって現代の時代劇撮影所にタイムスリップし「斬られ役」として生きていく姿を描いたコメディー映画。京都で米作り農家を営みながら映画製作を続ける安田監督が脚本、原作、撮影、照明、編集、VFX(視覚効果)整音、タイトルデザイン、タイトルCG製作、現代衣装、車両、製作など1人11役以上を務め、わずか10人足らずのスタッフとともに、自主映画として製作。「自主製作で時代劇を撮る」という無謀な試みに「脚本が面白い!」と、日本の時代劇製作の中心地・東映京都撮影所が特別協力した。
8月17日に“インディーズ映画の聖地”と呼ばれる東京・池袋シネマ・ロサ1館のみで封切られて以降、評判が評判を呼んだ。その反響を受けて、9月からギャガが配給に乗り出し、380館超に公開が拡大した。
安田監督は「まずもって、新藤兼人さんと言えば我々、自主映画の大先輩。冠した賞をいただけてうれしい。東映京都撮影所、ミニシアター、シネコン(配給の)ギャガの皆さま、観客の皆さんの心で助けられた」と感謝。「小学校5年生以上90歳まで明日、頑張ろうと思える映画を、費用対効果を考えて作っていきたい」と意気込んだ。
2024年度の新藤兼人賞は、215作品が選考対象となった。受賞者には、正賞の新藤兼人監督デザインのオリジナルトロフィーと、副賞として金賞には賞金50万円とUDCast賞、銀賞には賞金25万円が贈られる。UDCast賞は、最新映画の字幕や音声ガイドを映画館で楽しめる無料アプリUDCastと、金賞受賞作のバリアフリー版制作が提供される。既に受賞作がバリアフリー化されている場合は、金賞受賞監督の次回作に提供。UDCastは、場面の説明をする音声ガイドやセリフや音の情報を入れた字幕など視覚、聴覚に障がいがある観客をサポートするアプリだ。プロデューサー賞には、正賞のクリスタルトロフィーと副賞の賞金50万円が贈られる。
新藤兼人賞は、日本映画製作者協会に所属する現役プロデューサーが、その年度で最も優れた新人監督を選ぶ。完成度や将来性のみならず「この監督と組んで仕事をしてみたい」「この監督に映画を作らせてみたい」というプロデューサーの観点を含む日本で唯一の新人監督賞。新人監督たちを発掘、評価し「今後の日本映画界を背負ってゆく人材を育てたい」というプロデューサー達の思いから、96年に「最優秀新人監督賞」として始まり、00年からは日本のインディペンデント映画の先駆者として知られ、12年5月に100歳で亡くなった、新藤兼人監督の名前を冠した現在の名称となり、29年目を迎えた。



