5月「團菊祭五月大歌舞伎」「六月大歌舞伎」(いずれも東京・歌舞伎座)で、8代目尾上菊五郎を襲名する尾上菊之助(47)、6代目尾上菊之助を襲名する尾上丑之助(11)がこのほど東京・神田明神で行った襲名披露のお練りは、これまでに見たことのないものだった。神田明神で歌舞伎のお練りが行われるのは初めてということも話題になり、関係者含め約2000人が見守った。
音羽屋一門や関係者、みこし、木やり、まとい、芸者衆で構成される250人の隊列が進むと、境内ではパフォーマンスが始まった。
ヒップホップミュージシャンのZeebraが初代菊五郎からの音羽屋の歴史をラップに乗せて語ると、観客からも驚きの声が上がった。本殿には菊之助の父で7代目菊五郎が姿を見せ、にこにことしている表情が印象的だった。菊之助と丑之助は観客の手拍子に乗って、菊五郎の元へ向かうと「音羽屋!」「8代目!」「6代目!」などと、一斉に声がかかった。襲名を控えた2人はきりりとしたまなざしを見せ、荘厳さとヒップホップのリズムがミックスされた異空間だった。
菊之助は「1歩1歩、歩みを進めるとともに、8代目菊五郎、6代目菊之助になる決意が固まり、高潔な気持ちで身が引き締まる思いです。これからも攻め続ける歌舞伎の精神、かぶく姿勢を忘れず、先人たちの教えを守り、力強く進んでまいります」とあいさつし、丑之助も「菊之助になる決心が固まった気がします。これからも一層努力をしますので、名前に負けない役者になります」と話した。そういう気持ちで歩みを進めていたのか、ともう一度見たくなった。
にこにこしていた表情の裏打ちのように、菊五郎も「(菊五郎の歴史を)軽妙な語り口で紹介してくださって、本当におもしろかったです」と楽しんだ様子だった。
襲名披露興行の成功祈願、菊之助、丑之助による「七福神」の奉納舞踊では、満開の桜に時期に小さな氷の粒が落ちる天候となったが、これもまたいろいろなものがミックスされた感を味わった。
終了後、菊之助は報道陣の取材に応じ「7代目と8代目菊五郎が並び立って、音羽屋一門で頑張っていきたい」と、あらためて決意を示した。
正式に名前が変わるのは、4月29日に歌舞伎座で行われる「古式顔寄せ手打式」だが、菊五郎は「今日をもって、8代目菊五郎、6代目菊之助の誕生です」と高らかに宣言した。先ほどの菊之助と丑之助の目を思い出し、確かにそうだなと思った。こうした行事を経て、決意や覚悟が固まっていくのだなと感じた。【小林千穂】



