1週間に2度ジョニー・デップ(62)を取材することは今後ないかもしれない。11月27日、8年半ぶりに来日したデップのアート展会見に行った。2部制で、前半パートは滞りなく終了。会場転換後に本人が登場する予定だった。が、出てくる気配がない。

30分押しとアナウンスがあった。30分後、まだ出てこない。会場側の厚意で報道陣にホットコーヒーが用意された。提供カウンターに並ぶ。あと2、3人で自分の番というタイミングで「そろそろです。ご準備ください」と言われた。ならばと席に戻った。

それでも始まらない。周りがざわつき始めた。みな、この後の予定を電話で調整していた。結局「そろそろです」から約30分後に再開された。

デニムにピンクのサングラスというコーデで現れたデップは、何事もなかったのように「ハロー、ハイ」と笑った。日本の俳優なら、というか海外の方でも、多くは「ソーリー」的なワードから入るだろう。

以前、日本の有名歌手の現場で、スタートがかなり遅れたことがあった。道路渋滞に加えて、会場前に着いても車から降りてこない。同乗者との雑談が盛り上がっていたようだ。なんとマイペース、と思ったが、取材開始時には「お待たせしてすみません」と言われた。デップは悪びれる様子がなかった。その感じが逆に「まあ、ジョニデだしな」と思わせ、腹立たしさも感じなかった。

しかも会場入り前には、宿舎で絵を描いていたという。“遅刻”の直接的な理由かは明言しなかったが、手にペンキをつけたまま「シャワーは浴びてきたよ」とあっけらかんとしていた。少年のようである。トーク中は通訳の女性によく絡み「僕よりうまく話すね」とべた褒めした。

私はこの日、ミス・インターナショナル世界大会の取材に1時間遅刻した。受け付けで「前の現場が押しまして」と謝ると、「ジョニー・デップさんからですか?」と笑って許された。ここでも「ジョニデだしな」が通じたようだ。

5日後、デップが監督した映画のジャパン・プレミアに赴いた。直前のレッドカーペットが45分押しで終わり、舞台あいさつも大幅に遅れる見込みとのこと。だが今度は、8分遅れただけで問題なく始まった。

またも自由だった。立ち位置のバミリなどあってないようなもの。ポスターの影に隠れたり、通訳を追いかけて舞台端でおどけた顔をしたり。一緒に夕食に行く約束をしている赤西仁(41)がゲストで登場すると「これがディナーだ。おいしいらしい」と花束を指さした。

つかみどころがない。だんだん、かつて演じていたジャック・スパロウやウィリー・ウォンカに見えてきた。西岡德馬さん(79)が別の取材時にこんなことを言っていた。「俳優はよく、どこまでが役ですかと聞かれるけど(本人の性質に)ないものは出せない」。

映画のあの特徴的なキャラクターたちは、ジョニー・デップ自身がその「種」を持っているから“存在”できたのだろう。眼前のハリウッドスターを眺めながら、普段時間に縛られすぎなのかなとか、ささいなことにせかせかしすぎなのかなとか、己を省みるひとときになった。【鎌田良美】