歌手辰巳ゆうと(28)が東京・明治座での「松平健×コロッケ45周年特別公演」(1月10日~25日)で、新鮮な存在感を見せた。
24年に芸能生活50周年を迎えた松平健(72)と、今年45周年のコロッケ(65)の大御所2人に臆することなく演じ、歌った。
第1部は「暴れん坊将軍 THE STAGE2 狙われた将軍」。誰もが知る松平の代表作。8代将軍徳川吉宗が、身分を隠し貧乏旗本の三男坊・徳田新之助として、悪を成敗する勧善懲悪の物語だ。
コロッケはかつて義賊と言われた梵天(ぼんてん)小僧で、今は傘職人として質素に暮らす半次郎役。
今作は現代の犯罪「闇バイト」を江戸時代に置き換えて、最後は幕府の陰謀にまで及ぶストーリー。徳田と梵天小僧のかかわりが柱となって物語が展開する。
辰巳は、徳田が居候する町火消し「め組」の頭の長三郎を演じた。
テレビ朝日系で約24年にわたって放送された時代劇「暴れん坊将軍」では、役名は違うが北島三郎、堺正章、山本譲二らが演じた役どころだ。
辰巳長三郎は勇ましさと、おちゃめさを兼ね備える。時にはシリアスに、時にはコミカルに演じ、物語のサイドストーリーを担う重要な役どころだ。
歌手とは違う、俳優としての表現力が光る。辰巳は「歌う時とは違う声をあえて使って、おちゃめな部分を大切に演じたいと思ってやっています」という。
一昨年、松平健芸能生活50周年記念公演「暴れん坊将軍」にも同役で出演。その経験が生かされた、成長した長三郎だった。
第2部「マツケン・コロッケのゴールデンパラダイスショー」では、2曲を披露した。
松平はスパンコールの着物姿で「マツケンサンバ2」などを歌い踊り、圧倒的なエンターテイナーぶりを見せつけた。
コロッケは再生、スローモーションなどの「ビデオものまね」や、絶品の「ロボットものまね」で会場を爆笑させた。
その2人に挟まれての歌唱は存在感が薄れてしまいそうだが、登場するやいなや、わずか2曲で明治座をコンサート会場の雰囲気に一変させた。
最初は新曲「ロンリー・ジェネレーション」(3月4日発売)。孤独でも前に進もうという、全世代に向けたロックテイストのメッセージを、熱く歌い上げた。松平やコロッケのファン層が多い中、共感の歓声が沸き起こった。
2曲目は愛の葛藤を歌ったヒット曲「迷宮のマリア」。観客にコールアンドレスポンス(掛け合い)を求めるなど、会場が一体となった。
自身のコンサートならクライマックスで披露するであろうこの2曲だけで、明治座を「辰巳ワールド」に染め上げた。
辰巳の肩書は「演歌歌手」だが、その固定観念を打ち破ろうともしている。新曲は演歌では使わない高いキー(音階)があり、発声法も変えている。
1月9日に都内で行った誕生日ライブで、髪を黒からシルバー(明るいアッシュグレー)に変えて登場した。
辰巳は「『演歌歌手イコール黒髪』という、しきたりみたいなものではなく、従来の演歌界にはなかったものを先駆者として発信していきたい」と話した。
4月から東名阪を回る「辰巳ゆうとスペシャルコンサート2026」をスタートさせる。最終公演となる7月13日は、ふるさとの大阪・フェスティバルホールで開催する。収容は自身過去最大の2700席。
辰巳は「フェスティバルホールは、(NHK)紅白(歌合戦)に出られるような方しかコンサートをしていない。頑張りたいです」と、年末の紅白初出場実現へ意気込んでいる。
「松平健×コロッケ45周年特別公演」は計23公演中10公演が貸し切りで、それ以外もほぼ満員御礼だった。クライマックスの松平の長時間に及ぶ殺陣は、観客の視線をくぎ付けにした。再演の可能性は高く、さらに成長する辰巳の姿も見られそうだ。【笹森文彦】



