“華麗なる格闘一族”から、2人目の横綱誕生が確実となった。

元横綱朝青龍を叔父に持つ、大関豊昇龍(25=立浪)が2度目の優勝。13勝2敗で優勝次点だった先場所に続く2場所連続の好成績で、29日の臨時理事会、番付編成会議を経て、横綱に昇進する見通しとなった。「豊昇龍 第74代横綱昇進へ」と題した3回連載の第1回は、節目で助言を送られたり、奮起を促すように突き放されたりと、常に密接に関わってきた叔父との物語。優勝25度の偉大な叔父に続き、名横綱への道を追求していく。 93年初場所以来、32年ぶりに「横綱」不在という危機を回避する見通しとなった。救世主は豊昇龍。かつて、土俵外でさまざまな問題を起こし、追われるように引退に追い込まれた朝青龍のおいだ。近い親族に横綱が2人となると「土俵の鬼」と呼ばれた、初代若乃花と、そのおいの若乃花&貴乃花兄弟の3人に次ぐ多さ。今場所で引退した照ノ富士まで、江戸時代から73人しかいない最高位史上、複数人の横綱を輩出した一族はこの2例しかない。豊昇龍は元プロレスラー、ブルー・ウルフらも叔父に持つ華麗なる格闘一族だ。

豊昇龍は今場所、報道陣に「なんでいつも叔父さんと比べられるかな。優勝25回よ。すごい人じゃない」と話したことがあった。偉大な叔父と比較され続けることに、へきえきとした様子。師匠の立浪親方(元小結旭豊)も「性格は全然違う。やさしい。顔が似ているから比べられてしまう」と、内心ではかわいそうに感じていた。ただ顔が似ているだけの比較ではなく、将来性は来日当初から、目を見張るものがあった。

千葉・柏日体高に、当初はレスリング留学した。だが在学中に相撲部に転部。当時、同高相撲部監督だった永井明慶氏が明かした。「翻訳アプリを使って『力士になりたい』と言ってきたんです。高1の時、校外学習として国技館で大相撲を初めて見て『叔父さんはこんなすごいところで相撲を取っていたのか』と感動したそうで」。きっかけはやはり叔父。その叔父もこの日、自身のX(旧ツイッター)に「横綱!?」などと投稿、陰ながら祝福した。

叔父とは実は、最近は不仲だった。ただこれまでの関係も密接になったり、疎遠になったりの繰り返し。今場所は、元朝青龍の影響で相撲を始めるきっかけをつくった金峰山が、初日から14日目までトップを守った。元朝青龍はあえて、豊昇龍ではなく金峰山にエールを送っていた。それも、豊昇龍の奮起を促す愛の裏返し。横綱に昇進すれば、叔父も一人前と認めざるを得なくなる。いつか「朝青龍」の冠が外れることを豊昇龍も、そして叔父も願うことになるはずだ。【高田文太】