ヤクザから俳優に転身し、作家、プロデューサーとしても活動した安藤昇さんが16日午後6時50分、肺炎のため都内の病院で亡くなった。89歳だった。1週間ほど前に体調を崩して入院。家族にみとられて亡くなった。

 異色の経歴を持つ映画スターだった。少年時代は少年院に収容されるなど荒れた生活を送った。1952年(昭27)には不動産の売買や飲食店の用心棒、賭博なども手掛ける東興業を設立。後に「安藤組」と呼ばれる一大組織となり、組長として1000人を超える組員を率いた。その中には作家安部譲二氏らもいた。

 58年に、後にホテルニュージャパン社長となる実業家の横井英樹さんとトラブルになり、組員を伴って襲撃事件を起こした。恐喝などの容疑で指名手配を受け、都内で逮捕された。6年間の服役後、64年に安藤組を解散した。

 翌65年に手記「激動」を映画化した「血と掟」に主演して映画俳優に転向し、松竹と専属契約を結んだ。精悍(せいかん)なマスクに、左ほおに本物の刀傷がある元ヤクザの迫力もあり、たちまち人気俳優になった。

 ◆安藤昇(あんどう・のぼる)1926年(大15)5月24日、東京都生まれ。少年時代は少年院に入るなどした。法大中退後の52年、東京・渋谷を拠点に「安藤組」を結成、1000人を超える組員を率いた。横井英樹襲撃事件で6年間服役。64年に安藤組を解散。翌65年に映画「血と掟」で映画俳優に転向。映画はヤクザ映画を中心に58本に主演。著書は「男の顔は履歴書」「男の覚悟」など。