レスリング女子62キロ級で初出場の川井友香子(23)が金メダルを獲得した。決勝で19年世界選手権覇者のティニベコワ(キルギス)に4-3で勝利した。57キロ級の姉、川井梨紗子(26=ともにジャパンビバレッジ)が16年リオデジャネイロ五輪63キロ級女王で、夏季競技で日本勢初の姉妹金メダリストとなった。姉を追いかけ続けた運動嫌いだった妹が、最高の結果を残した。姉は5日に57キロ級決勝で2連覇に臨む。

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姉はいなかった。決勝開始のスタンドに、いつも見守る姿はなかった。ただ、友香子の戦いに不安の影はなかった。がっちり組み合う。この1年筋トレで鍛え抜き、1日5食を食べ、下半身の筋力が1・5倍になった。肉体に宿した力は現世界女王にも押し負けない。第1ピリオド、残り30秒。「記憶がなくて、気付いたらタックルに入っていて」。練習のたまものの一撃でテークダウンを奪い2点。

2-1で折り返した第2ピリオド。「いけるよー!」と声が聞こえた。走ってスタンドに駆け込んだ梨紗子だった。1分すぎには再びテークダウンで、4-1に。最後までしのぎ、5年前の姉と同じ日の丸の旗を巻き、マットを走った。「ずっとずっとこれがしたかった」と目は真っ赤。スタンドで号泣していた姉が「あんな良い景色はない」と教えてくれた表彰台からの景色も味わった。

おとなしい少女だった。「運動は嫌い」。手芸が大好き。ただ、川井家にはレスリングがあった。89年世界選手権代表の母初江さん(51)がコーチを務める教室に姉と三女優梨子さんが通い、試合の日は構ってもらえなかった。寂しかった。だから小2で競技を始めたが、前向きにはなれない。「鈍くさい。運動神経も良くない。最後の1人に残るまで練習してました」。

至学館高に「梨紗子がいるから、何となく」と入学後、転機は16年4月の左肩の手術だった。練習場の隅で筋トレしかできない。仲間がマット練習で追い込むのを見ながら、考えを改めた。姉に帯同したリオ五輪で、「いつか、私も」と目線が上がった。17年には世界選手権の代表決定戦に「妹にもチャンスを」と直訴する姉の推薦で、初の世界舞台を踏んだ。

「いつか追いつけるように」と姉の背中を追い続けてきた。これまでは引っ張られた。その決勝で、半分は姉なしで戦い抜いた。最後は一緒に戦った。精神的な自立、たくましさでつかんだ金。「最高の1日になった。明日は私がしっかりサポートして、梨紗子がしっかり金メダルを取れるように」。それがもっと最高な日になる。【阿部健吾】

 

◆川井友香子の得点経過

第1P

41秒 消極的姿勢を取られて川井にアクティビティタイムが課される。

1分11秒 川井はアクティビティタイムで得点出来ず、ティニベコワに1得点。

2分27秒 川井が片足タックルからティニベコワのバックを取って2得点。

第2P

1分30秒 ティニベコワのタックルをかわしてバックを取って川井が2得点。

2分56秒 ティニベコワが片足タックルから川井のバックを取って2得点。