地球の歴史上初めてと言えるようなことが世界レベルで発生しており、フットボール界が止まってしまいました。何しろ、いつ再開することができるのか全く先が読めないこの現状に対して、クラブの経営陣は非常に悩ましい状況です。スペインのバルセロナは、報道によると選手が70%の減俸に合意したとか、そのほかにも多くのクラブがつられるように同様の発表をしています。レアル・マドリードも当初は減俸なしと報道がなされていたものの、先日10%-20%の減俸に選手サイドが同意したとありました。いつ試合が再開されるのかが1つの鍵となるような状況ですが、そもそもの収益構造から考えるとエンタメ業界自体がイベントせずに収益を上げることそのものが難しい。フットボールではまさに最高のエンターテイメントである試合の興行なしにチームの経営は成り立たないといったところでしょうか。

本来であればクラブの財政面からフットボール界をのぞくという場ではありますが、今回はいつリーグが再開されるか読めません。前回明記したように、これまでのファイナンスにおける取り決めFIFAファイナシャルフェアプレー(FFP)がすべてにおいて当てはまらない状況となってきているように感じます。一説ではありますが今シーズンはカウントされないなどという話も持ち上がっているようで、この先の動きは全く予測がつかない状況ではあります。そんな中、今回はバルセロナとレアル・マドリードにみる対応の違いを、財政的視点からのぞいてみたいと思います。

まず現在のなされているニュースは以下の通りですがこの違いは一体どういったところから来るのでしょうか。

☆バルセロナ:選手の減俸70%(一時解雇条例適応期間のみ)

☆レアル・マドリード:選手の減俸10−20%

選手側が減俸を受け入れているのはバルセロナだけではなく、アトレティコ・マドリード、アラベス、ベティスなど多くの他クラブも表明しており、レアル・マドリードも最終的には10−20%の減俸を決めたとありました。この裏側には、やはり人件費の割合という、なかなか表には出てこない部分の割合比率が大きく響いているように思います。

☆バルセロナの人件費率:70%弱 (65%とした場合、約1200億円の売り上げに対して約800億円が人件費)

☆レアル・マドリードの人件費率:約50%弱(約1000億円の売り上げに対して約500億円弱が人件費)

ともに世界最強を掲げ、特に2000年代のサッカー界をリードしてきたスペイン2強のクラブにおいて、ここまで違うものかと驚いてしまいます。さらには、バルセロナはERTE(一時的な失業保険制度で、採用することで政府から失業保険をうけとることができる)を選択も、レアル・マドリードはこれを選択しないという違いも。(ちなみに、マドリードでは高給取りのバルセロナの選手が国から失業保険を受けるとはどう言うことかと大ブーイングのようです・・・・本来の目的は仕事を失って生活に困る人々を救済するためのものであるはずなのですが)。

個人的な意見にはなりますが、Jリーグでも一部給与返納がありましたが、下部カテゴリーの決して大きくない予算金額で運営されているクラブは想像を絶する状況であると思われます。このようにクラブ一つ一つの細かい部分に目を配ると、やはり各クラブの収入をリーグ管理にすることによる分配制度は取り入れても良いのではないかと感じます。

確かにレアル・マドリード大学院の経営学修士コースの授業で「フットボール経営におけるビジネスリスクとは」という授業があり、その中に天災・人災というものがありましたが、まさかこのような形で世界的に打撃を受けることになるとは想像しておりませんでした。一刻も早く今までのフットボールに魅せられた日々を送ることができるように終息を祈るばかりです。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)