スポーツには力がある。そして、同じように本にも確かなパワーがある。新型コロナウイルス感染拡大で、社会や私たちを取り巻く状況、暮らしも大きく変わった。そんな新たな日常の中でも、アスリートや指導者は必死で闘いを続けている。

日刊スポーツでは、感受性も豊かなトップアスリートや指導者に「私の相棒書」と題し、ステイホームの自粛期間やこれまでの人生で触れて、力をもらってきた1冊を取材。5人の「相棒」紹介します。

   ◇   ◇   ◇

陸上男子短距離、飯塚翔太(29=ミズノ)

『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』(アダム・グラント著、三笠書房)

世の中で成功している人のモチベーションのアンケートなどを調べ、まとめてあります。3回ぐらい読みました。1回では分からなかったので(笑い)。

共感できることもたくさんありました。一番成功するのはギバー(GIVER=与える)な人。僕らは競技をしている時も、それ以外でもいろんな人と会う。人と一緒に、自分が持つ10の知識やノウハウを、100にできる。そんなウィンウィンの掛け算ができる人は、やっぱり上へいくんですよね。

競技を磨く上でも、1人だと、考え尽くしても答えが見つからないことも多い。成功者は自らが与える人であり、そして人からもアドバイスを与えられる人。そういう精神を持つことで、好タイムにつながるというのもあります。

とはいえ、同じギバーでも、犠牲的に自分の知識を取られて終わってしまうだけだと、失敗してしまう。そこは自分の経験の中でも、共感できた部分です。

僕は競技から離れた時間を過ごすことからも、競技の活力がわいてきます。競技以外にも夢中になることがあれば、けがなど競技ができなくなった時、気持ちが底まで落ちず、耐えられます。そういうものを探すことは、読書以外でも、すごくプラスになると思います。

◆飯塚翔太(いいづか・しょうた)1991年(平3)6月25日、静岡県御前崎市生まれ。藤枝明誠-中大。10年7月の世界ジュニア選手権200メートルをアジア人として初制覇。12年ロンドン五輪は200メートルで予選敗退も、400メートルリレーはアンカーとして5位入賞。16年リオデジャネイロ五輪400メートルリレー銀メダリスト。185センチ、77キロ。