“レジェンド・バタフライ”の優勝はならなかった。71歳の別所キミエ(ドマーニ卓球ク)は最終戦で韓国選手に1-3(11-9、9-11、5-11、6-11)で敗れて2勝1敗となり、銀メダルにとどまった。

出場4選手のリーグ戦。ともに2連勝で迎えた優勝決定戦だった。別所は第1ゲームを先取したが、相手のスピードと強打に押されてその後3ゲームを続けて失った。

「勝てる相手です。だから次につながる試合でした。相手のスピードにタイミングが合わなかったですね。次は勝ちますよ」。日本初開催の国際大会で金メダルを逃しても、別所は笑顔で試合を振り返った。

オリジナルの魔球“バタフライ・ショット”(相手コートのネット際に落ちる逆回転のロビング)も威力を欠いた。それでも第4ゲーム中盤、ワンバウンドで自分コートに戻ってくる完璧な一打を決めて意地を見せた。さらこの日も金髪にチョウの髪飾りをたくさんあしらい、両手首にピンクのリボンを結んで会場に視線を独り占めにした。

普通の71歳なら寝込んでいてもおかしくない。昨年の8月から9月にかけて災難が続いた。横断歩道で車いすごと車にはねられ、全身打撲。その後にアクシデントで右脚を骨折。世界選手権(10月、スロベニア)遠征出発2日前には車の追突事故に巻き込まれ、欠場を余儀なくされた。愛用の車いすの修理が終わった今年4月から本格的に練習を再開したが、今でも右腕や腰を中心にしびれ、痛みが残っている。

「パラ卓球はこんなおばあちゃんにもできる。その楽しさを多くの人に知ってほしい」。こんな思いがレジェンドのエネルギーになっている。「若い人につき合って打ち合ってはダメ。バタフライをどんどん上げて、いやらしい選手にならないとね」。来年の東京でパラリンピック5大会連続出場を果たすためには現在8位の世界ランキングを少しでも上げておく必要があるが、その戦略もしっかり固まっている。

1日の試合では「2020」にあやかって左右に20個ずつのチョウの髪飾りを着けて戦った。しかし、この日は1個減らして39個にしたという。そのこころは「いつも応援してくださる報道陣のみなさまに感謝の『サンキュー(39)』で~す」。

明るく、強く、常に前向きに現役ロードを走り続けるレジェンド別所の周囲には、笑顔と笑いが絶えることがない。【小堀泰男】