吉田沙保里(33=フリー)がヘレン・マルーリス(24=米国)に敗れ、五輪4連覇を逃した。銀メダルで4大会連続でメダル獲得となった。01年から続いていた個人戦の連勝記録は206で途切れた。

 第1ピリオド2分で消極的な相手にアクティビティタイムが与えられ、しのぎきって1点先行した。第2ピリオドは開始25秒ほどで強引な首投げを返され、バックを取られて2失点し、逆転を許した。反撃は空回りし、逆に残り1分でさらに2失点。1-4のまま逃げ切りを許した。

 試合後は涙が止まらなかった。「たくさんの人に応援していただいたのに、銀メダルで終わってしまって申し訳ないです。日本選手の主将として金メダルを取らないといけないところだったのにごめんなさい」と謝罪の言葉が続いた。敗因には自分の気持ちを挙げた。「最後は勝てるだろうと思っていたのですが、取り返しのつかないことになってしまった」と振り返った。得意のタックルで相手の右足を取る場面はあったが、相手のしつこい防御に技を展開させることができなかった。「自分の力を出し切れなくて申し訳ないです」と悔いの残る試合になってしまった。

 表彰式でも涙は止まらなかった。大歓声には右手を挙げて応えたが、五輪で初めて見る星条旗の掲揚をしゃくり上げながら見た。勝者に拍手を送ったが、笑顔は一瞬も見せられなかった。「最後の最後に銀メダルに終わると思っていなかったです。悔しいです。(ライバルが)『打倒吉田』で来るのは分かっていたのですが、最後の最後に落とし穴にはまるとは思っていなかったので」と気持ちの整理はできなかった。

 3歳から亡き父・栄勝さんと始めたレスリング。スタンドで父の遺影を抱いて見守った母・幸代さんからは「泣かんでいい。大丈夫。ここまで連れてきてくれたんだから。ありがとう」と声をかけられた。「父がいないオリンピックは初めてだったですけど、助けてくれるとどこかで思っていたのが間違いだったかなと。でも応援していてくれたと思います。『お父さん、私をここまで育ててくれてありがとう』と言いたいです」と感謝した。「レスリングをやってきて幸せです」という言葉が救いだった。