予選は桐生選手が救ってくれた。予想よりも後ろでバトンをもらったと思うが、冷静に走っていた。いろんな経験が生きている。多田選手、山県選手、小池選手は走れていないわけではないが、100メートルの影響が残っている印象だ。その中で桐生がリレーのエースの働きをしてくれた。

全体9番手のタイムだが、悲観することはない。ほかがもっと出してくるかと思ったが、ジャマイカの37秒82が最高で実力は拮抗(きっこう)している。決勝では、どの国が1位でも8位でもおかしくない。

何より大きいのは、日本は決勝で大外9レーンに決まったこと。カーブが緩く、より直線に近い走りができる事はもちろん、気持ちの面でもプラスに働く。一番前で走るため、内レーンと違い、右隣に選手がいない。とにかく逃げるしかない。相手は見えない状況で、複雑なことを考えずに走れる。前との差を意識し、力みが生まれることもない。95年世界選手権も準決勝は下位通過だったが、大外の決勝は5位で、アンカーまではトップ集団だった。

個人種目で負けた人とリレーで再戦する時、自信を持って走るのは難しいが、それが関係なくなるのが9レーン。大砲になる存在がいない時の大外はすごくいい。うまくバトンが渡れば面白いレースになる。(100メートル元日本記録保持者)