初の金メダルを狙う男子400メートルリレーの日本(多田修平-山県亮太-桐生祥秀-小池祐貴)は予選1組で38秒16の3着に入り、6大会連続となる決勝進出を決めた。4着で落選したフランスとの差はわずか0秒02と、まさに薄氷の突破となった。全体9番目のタイムだが、6日午後10時50分の決勝ではリレー侍が下克上のメダル獲得を狙う。

   ◇   ◇   ◇

悲願の金へ弾みの付く予選とはいかなかった。危なかった。多田、山県、桐生、小池の4人は走り終えると、電光掲示板を見つめた。1着ジャマイカ37秒82、2着英国38秒02、3着日本38秒16。予選突破が無条件に決まる3着は入れた。だが、4着フランスとの差は100分の2秒。距離にして2センチ足らず。そのフランスは、米国が敗れる波乱が生まれた2組の結果によって落選した。もしも最後に抜かれていたら…。まさにギリギリの突破だった。日本と同じ1組で、優勝を狙える走力が整っていた南アフリカはバトンミスで失格したことも大きかった。

100メートル、200メートル代表がそろって予選敗退。不安視された個人の低調ぶりは改善されていなかった。それが響き、苦戦を強いられた。第1走者から、ともに100メートル代表の多田、山県とつないだが、前には出られず。展開は厳しくなった。救ったのは5月に右アキレス腱(けん)を痛め、個人の代表を逃した桐生。「僕はリレーをやりにきた。そこに集中している」。100メートルを走れなかったショックも、足の不安もない。定位置の第3走者で激走し、チームを押し上げた。アンカーの100メートル代表の小池はフランスに詰められて、何とかの3着死守だった。

個人の走力の不安は残るが、日本には研ぎ澄ませてきたバトンワークがある。それが決勝へ向けたタイムの伸びしろになる。予選は“安全バトン”だった。次走者がスタートを切る位置を通常より「半長足から1長足」の20センチ前後縮め、ミスをしない事を最優先とする策を取った。決勝は違う。「もうちょっと攻められる」(山県)。リスクも高まるが、つながれば時は最も無駄のない“攻め”のバトンで勝負を懸ける。

予選の38秒16は決勝進出チームで最も遅い。銀メダルだったリオデジャネイロ五輪から5年。自国開催である五輪の金メダルだけを目指してきた。個がだめならバトンで覆す。原点に返って、リレー侍が下克上に挑む。【上田悠太】