24年パリ五輪で50キロ競歩を除外とする国際オリンピック委員会(IOC)の決断に「最後のメダリスト」が異を唱えた。表彰式後の記者会見。3時間50分8秒で金メダルを獲得したダビト・トマラ(31=ポーランド)は「我々は今回の決断について、理解できないところがある。テレビの放映時間が長すぎるという意見もあるが、なぜなのか。理解ができない」と言った。

強い口調で思いを伝えたのは、銅メダルをつかんだエバン・ダンフィー(30=カナダ)だった。

「IOCは若者が楽しむ競技を求めているが、それはうそ(実際と違う)。小さい男の子、女の子も、ずっと見ていた人がいっぱいいる。(コースは)1キロを使うだけ。それを我々から取り上げてしまった。この話は1時間でもできる」

ダンフィーは50キロ競歩の意味を力説した。

「有名になりたい、金もうけをしたいからやる競技ではない。みんな友人で一緒に苦しむ。我々の体は何が可能なのか、それを知るためにやる。目標を定め、困難に直面し、乗り越える。レースそのものが人生の価値として表現される。50キロの選手は素晴らしいロールモデル。500メートルの移動でも車を使う人がいる。『それなら歩こう』と考える人がいるなら貢献できる」

銀メダルのヨナタン・ヒルベルト(26=ドイツ)も同調した。

「スーツを着ている世界陸連、IOCの人たちはアスリートと話をしていない。我々には意見を述べる機会が十分になかった。50キロは陸上で最も長い距離。それは我々にとって重要な点。私も、なぜ、誰が決めたのかと問いかけたい。我々は最後のメダリストになったかもしれない。最後のメダリストになったのは素晴らしいが、50キロ競歩の歴史が終わってしまい、本当に残念です」

3人の言葉には熱がこもった。競技者としての複雑な思いを世界に発信した。