まずは一山麻緒選手の17年ぶりの入賞をたたえたい。少しでも結果で前進することは大きい。日本勢3人の中で最も無駄な動きがなく、走る位置が定まっていた。鈴木選手は前の選手との間隔が気になり、前田選手も集団の先頭で引っ張ったり、後ろに下がったりとエネルギーを使った。大きな集団の真ん中にいると、前後左右のライバルの発する熱も受けてしまう。一山選手はいい位置につけ、ペースの変化に上手に対応していた。

一方で入賞や今回の順位に満足してほしくない。3人はまだまだ伸びる。今回は前夜に号砲が1時間早くなった。私も経験したことがない。海外レースで、まれに遅くなることはあったが、早まったことはない。

銅メダルのセイデル選手は自己ベストが一山選手より5分近く遅い。夏場のレースは持ちタイム以上に、日陰をうまく使うなど、環境に順応することが大事。私は海外で膝まで水がはねる大雨の中を走ったり、トラブルも経験した。新型コロナウイルスが落ち着いたら、一山選手もぜひ、規模を問わずに海外のレースをどんどん走ってみてほしい。24年パリ五輪のメダル獲得へ、今後の伸びしろは経験を積むことだ。(04年アテネ五輪金メダリスト)