女子の日本(世界ランキング10位)が、劇的逆転で歴史をつくった。

ベルギー(同6位)との競り合いを制し、初のベスト4進出。1次リーグB組2位で2大会連続でベスト8に進んだ日本が、C組2位の欧州の強豪を86-85で下した。2点差の最終クオーター9分44秒、残り16秒で、林咲希(26=ENEOS)が劇的な逆転3点シュートを沈め、試合をひっくり返した。6日の準決勝では悲願、初のメダルをかけ、フランスと対戦。7月27日の1次リーグ初戦では、日本が74-70で勝っている。

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2点を追い、残りは約20秒弱。パスを受けた林は落ち着いていた。マークを外し、少し下がりながら両手で3点シュート。きれいな放物線を描いたボールがネットを揺らした。外からのシュートが武器の林は「コートに立った以上は仕事をするのが使命だし、もらったら打とうと思っていた」。小さくガッツポーズをつくったが、まだ残り時間がある。リードは1点。決められれば敗退。誰も表情を崩さなかった。タイムアウト後の約16秒。相手のシュートが外れるまでが長く感じた。劇的逆転で初の4強入り。ついに、メダルが見えた。

一時は12点差までリードを広げたが、ベルギーの猛反撃に遭い、41-42で前半を折り返す。第3Qも相手にペースを握られた。しかし第4Qに粘り強く追い上げ、競り勝った。約2週間前の強化試合でも対戦し、一進一退の攻防の末に84-76で勝利していた。主将の高田は「苦しい展開でも諦めず戦い、この結果につながった。試合が終わった瞬間、今までにない喜びを感じた」と声を弾ませた。

17年就任のトム・ホーバス監督のもと、チームは40分間走り続けるバスケを標榜(ひょうぼう)してきたが、昨年12月に想定外の事態に見舞われた。米WNBAでのプレー経験を持つ身長193センチのエース渡嘉敷が右膝に重傷を負い、五輪出場が絶望的に。6月には正式にメンバー外となった。戦力は大幅にダウンしたかと思われ、期待もしぼみつつあったが、エースから託された思いを胸にさらに団結。高さがない分、割り切って、徹底して、スピードと3点シュートに磨きを掛けた。

リオデジャネイロ五輪で20年ぶり2度目のベスト8進出を果たした。さあ、次は4強-。しかし、ホーバス監督は「東京五輪では金メダルを取る」と言い続け、選手たちも「目標は金メダル」と口にするようになった。渡嘉敷が外れてもブレなかった。そして、4強入りしても林は真顔で言い切った。「勝ちます。どこがきても勝つ。絶対勝って金メダルを取りたい」。この言葉を信じ、画面を通じ後押しするだけ-。そんな局面がやってきた。【奥岡幹浩、峯岸佑樹】