日本女子初の五輪ボクサー、フェザー級の入江聖奈(21=日体大)が一気にメダルを射止めた。12年ロンドン五輪から採用された女子で、日本で初出場した勢いままに、準々決勝でルーマニア選手を3-2の判定で下した。3位決定戦はないため、初のメダル獲得を決めた。

1回開始から得意の左ジャブで突いた。強打を振ってくる相手をさばきながら、ペースをつくっていく。1分すぎには右ストレートも顔面に打ち込んだ。2回にはワンツーも打ち込んで、目まぐるしい攻防で渡り合う。3回も前進しながら打ち込んで切る圧力に耐えながら、基本に忠実なパンチを打ち続けた。採点発表では祈るしぐさ。「ブルー」と勝ち名乗りを受けると万歳して笑顔をみせた。

「日本は五輪で見ない。なめられているかも。メダルを取ってドヤ顔をしたい」。大会前には意気揚々としていた。女子はフライ級の並木月海と2人出場だが、試合順でメダルを決めるのは先。「女子初というプレッシャーは感じてない。自分が初めて五輪の舞台に上がれる。誰も経験していないこと。めちゃくちゃ楽しんでいきたい」と語っていたとおりに躍動した。

小学校2年、1つの漫画がきっかけだった。母マミさんが大ファンだった小山ゆう。家にある作品をぱらりとめくった。ボクシングを題材にした『がんばれ元気』だった。「ただ殴るのではなく、自分自身に向き合い、かつ相手を殴らないといけない。深い」。子どもながらに引かれた。

1カ月は「女子がやるスポーツじゃないよな」と母にも言い出せずにいたが、欲求は止められなかった。「ボクシングをやりたい」。熱意に折れた母の知人が偶然、ジム経営者で体験入会。グローブの感触に触れると、一気にのめり込んだ。

中学校では鳥取県で女子唯一の選手登録者だった。男子と練習しながら、着々と実力を伸ばした。中学では陸上部で全国大会出場もしたスタミナ面も力に、日本のトップに登り詰めていった。20年3月のアジア予選で準優勝し、日本初の五輪ボクサーとなった。

今大会4試合目となる準決勝は31日。さらなる「ドヤ顔」を披露してみせる。