<東京オリンピック(五輪):フェンシング>◇30日◇男子エペ団体◇千葉・幕張メッセ

日本フェンシング界が悲願の金メダルを獲得した。山田優(27=自衛隊)見延和靖(34=ネクサス)加納虹輝(23=JAL)と補欠から昇格した宇山賢(29=三菱電機)の日本が開催国枠から勝ち上がり、最後はROC(ロシア・オリンピック委員会)に45-36。男子フルーレで銀メダル2個の太田雄貴(日本協会前会長)でも果たせなかった、全種目を通じて初の頂点だった。日本の五輪選手団にとっては64年東京、04年アテネ両大会の16個を上回る1大会最多17個目の金メダルとなった。

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山田の妻里衣さん(30)が感動した。表彰式後にテレビ電話で祝福し「すがすがしい表情で格好良かった」。長男瑛斗君(1)は寝てしまったが「金メダルは本当にキラキラ輝いていました」。同大時代の1年後輩だった宇山も活躍し「厳しくしてきたけど今日は褒めてあげたい」と笑った。

里衣さんもエペの元全日本女王。東京五輪を前に引退し「競技への未練があったはずなのに食事や育児で支えてくれて。感謝しかない」と山田が恩返しを誓った存在。「踏ん張ると足の指に違和感がある」という夫からの相談を受け、昨年5月の椎間板ヘルニア手術を後押しもした。延期をへて息子は1歳になり「パパ」と呼べるようになった中で初の快挙と巡り合った。

直前合宿前、調子が上がらずコーチに怒られ「家で泣きながら五輪前の練習について話していたことがありました」。その時は黙って聞き、山田が個人の準々決勝で敗れ「ダサい負け方したな」とツイートした時には「自分を否定しちゃダメ! と叱りました」。早生まれで4歳下に当たる山田を支え、夫婦の夢になった日本史上初の金メダル獲得に貢献した。【木下淳】