「新生体操ニッポン」が惜敗で2連覇を逃した。262・397点を記録し、ROC(ロシア・オリンピック委員会)に0・103点届かずに銀メダル。

エースの橋本大輝(19=順大)を中心に萱和磨(24)、谷川航(24=ともにセントラルスポーツ)、北園丈琉(18=徳洲会)が健闘したが、わずかに届かなかった。内村航平(32)がいない団体は4大会ぶりで、選手は存在感は放った。

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橋本は味わったことがない心に満たされていた。「一人で演技する感覚じゃない。みんなの思いを背負っている感じ」。最終種目の鉄棒の最終演技者。「大輝、いってこい!」。仲間の叫びにも似た応援に震えた。皆が名乗りを上げていた大トリの演技。その役を担う。鉄棒を握った。

順位はその時点で3位だった。同班で2位の中国とは0・464差、1位のロシアとは0・537差。細かい得点差は意識していなかった。それまでの17回の演技を大きなミスなくつないできた仲間の思いに、気持ちは1つだった。「感謝の気持ちを示したい」。

連続の離れ技を決め、着地もぴたりと止めた。会心の出来に、天を見上げてほえた。仲間も同じように叫んでいた。4人で抱き合って感情を爆発させた。中国を逆転し、ロシアと0・103差に迫る銀メダル。一時は3点以上の差をつけられながら、後半に猛烈に追い上げた。

内村がいない団体戦で、存在証明をしたかった。種目別代表だったキングは、惜しみなく助言をくれたが、同時に誇りもあった。国内の厳しい選考を勝ち抜いてきた。萱は「頼り切ってはいけない。戦うのは僕ら4人」と気持ちを代弁。橋本も「今のチームが日本で最強」と堂々と言った。

24日の予選、2種目目の鉄棒で内村が落下した。同班で演技していた4人にも、衝撃は走っただろう。だが、そこで崩れなかった。水鳥監督は「あの内村選手が失敗するんだと構えてしまうかなと思ったが、彼らは違った」と目を見張った。内村もその演技の頼もしさに「もう俺はいらない」と後輩に託した。

この2年で急成長した橋本を中心に、メダルの色以上の強さを印象づけた。谷川は「18、19年の世界選手権では(チームを)引っ張り切れてなかったが、今は違う」と手応えをつかみ、萱は「もう今すでにパリの事を考えている」、18歳の北園は「僕が引っ張っていく」と先を見た。

次の戦いは3年後。「また下の世代も出てくる。世代交代はさせない」と橋本。母国で躍動した「新生体操ニッポン」。今度はメダルを最高に輝く色に変える。【阿部健吾】