東京五輪の開会式が行われた国立競技場周辺(新宿区)には、23日午前中からから大勢の人が集まり、各地で密状態となった。午後0時40分にブルーインパルスが都内上空を展示飛行。競技場に近い新宿御苑は1時間の入場者数が2000人を超え、昼前には一時入場が制限された。競技場最寄りのJR千駄ケ谷駅は、まるで通勤ラッシュのような混雑ぶり。競技場西側、東京体育館(渋谷区)の周りの日陰部分は、昼前にはほぼ満員。猛暑を我慢しながらその時を待った。

午後3時ごろ、競技場の前にある五輪マークのモニュメントには、記念撮影をする人でごった返した。20代の女子大学生は撮影を終え「せっかく東京で開かれるので、興味本位で近くまで来てみました」と話した。9歳と7歳の小学生の子どもと訪れた40代の女性は「将来、この写真がこの子たちの記憶に残っていて欲しい」とほほ笑む。密となった広場では一部、マスクを外した外国人の姿が見られた。外国人女性がダンスをしながら、周囲を動画で撮影し「エンジョイジャパン!」と大声で呼び掛けると、若者が「フーッ!」と盛り上がった。

開会式が始まった午後8時ごろ、会場の外には身動きが取れないほど人が密集。競技場内で花火が上がると歓声と拍手が沸き起こり、警察やボランティアは誘導の対応に追われた。

コロナ禍での祭典には期待や不安、さまざまな声がもれた。会社員の30代女性は「開会式前にドタバタがありましたが、ここまで来たら無事に成功して欲しい」と祈る。別の会場でボランティア活動を終えてきたという男性50代の男性は「準備を進めてきた分、近くでオリンピックを感じたかった。本来とは異なる形ですが、最後まで協力したい」と目を輝かす。会場の誘導案内のアルバイトをするという50代の男性は「人が多すぎて事業者ともうまく連携が取れていない。仕事の詳細がまだ説明されていない」と慌てた様子だった。会場から少し離れたベンチでは、缶ビールを手に談笑するグループも。無観客開催の代償か、会場周辺には混乱と感染リスクが垣間見えた。【沢田直人】