鈴木孝幸(34=ゴールドウイン)が今大会の日本勢金メダル1号となった。男子100メートル自由形(運動機能障害S4)予選を2位で通過し、決勝は1分21秒58で優勝。前日の50メートル平泳ぎ(運動機能障害SB3)の銅メダルに続いて表彰台に立った。前回16年リオデジャネイロ大会は全競技を通じて日本勢の金はなかったため、12年ロンドン大会以来9年ぶりの日本勢金メダルとなった。

電光掲示板を確認して「ヤー」と大きな叫び声を上げた。「フィニッシュした時は1位かわからなかった。掲示板を見て、1位を確認して、ちょっと喜びが出ました」と振り返った。

レースプランについては「力まずに、スピードを上げられたらという感じができたらいいなと思っていた」。ラスト25メートルで2番手だったが、最後に隣のイタリア選手を逆転した。「ちょうど左呼吸なので見えて。それもすごくよかった。ラスト25メートルで向こうが前で。落ちてきたので、自分が落ちないようにしようと思った」と振り返った。

鈴木は予選で、この種目の世界記録を5月に出したばかりのダダオン(イスラエル)の隣で泳いだ。最大のライバルはフライングで失格したが「動揺はなかった」とベテランらしく冷静に、余力を残しながら決勝へと進んだ。「予選は決勝に残ることだけ。決勝はメダルを目指して泳ぎます」という言葉通りの結果を出した。

パラ競泳の運動機能障害は10段階に分かれ、各種目でクラス分けが行われる。04年アテネ大会から平泳ぎは重い方から3番目のSB3、個人メドレーは4番目のSM4だったが、自由形は障害の軽いS5。これまで自由形のメダルがなかった理由でもあったが、18年に見直されて自由形も1つ重いS4に。これで、一気にメダルが見えていた。

34歳で迎える東京大会を「集大成」と位置付けてはいるが、まだまだ進化は止まっていない。メダルなしに終わった16年リオデジャネイロ大会後、自身の泳ぎを分析して「体幹に鍛える余地がある」と判断。徹底した体幹トレーニングで、今もタイムを伸ばす。

04年アテネ大会から出場し、成績とともに競技に取り組む姿勢や豊富な知識などで若いパラアスリートの手本として活躍してきた。リオ大会後に1度は引退を決意しながら、自身の可能性を信じて臨む5回目のパラリンピック。「5種目でメダル」の挑戦は、まだまだ続く。