女子日本代表「なでしこジャパン」(FIFAランク10位)が、オーストラリア(同9位)に1-0で競り勝った。東京五輪前最後の実戦で後半9分、背番号10のFW岩渕真奈(28=アーセナル)がPKを決めた。非公開で行われた6月16日のメキシコ戦を含めて4戦連続ゴールで、「10番」の先輩である澤穂希さんや高倉監督のもつ連続得点記録に並んだ。チームは15日に札幌入りし、カナダ(同8位)との1次リーグ初戦(21日、札幌ドーム)へ総仕上げに入る。

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歓喜の輪の中心には「10番」がいた。後半立ち上がり、MF長谷川の左クロスが相手DFの手に当たった。先制のチャンス。新しい10番、岩渕がペナルティースポットに立った。試合を大きく左右する重要な局面で、落ち着いて左隅に決めた。「蹴りたいと思ったら、唯(長谷川)が『ぶっちさん!』と言ってくれたので蹴りました。プレー内容には満足していないけど、結果はひとつ、いいスタートが切れたかなと思います」。やはり、なでしこジャパンの盛り上がりには、10番の活躍が欠かせない。

「10番」といえば、レジェンド澤穂希さん。ともにプレーしてきた岩渕も「目標、夢、神様。選手としても、人間としてもああなりたい」と憧れてきた。東京五輪という大舞台を前に、高倉監督から「チームの浮き沈みを背負って立つくらいの気迫で躍動してほしい」と10番を託された。「意識しないようにしていたけど、意識してしまった」と明かしたが、初めて10番を背負って、結果を残した。

思い入れのある対戦相手だった。15年W杯カナダ大会の準々決勝で、オーストラリアから終了間際に決勝ゴールを決めた。大会直前に右膝を負傷し、ケガを抱えながら臨んだW杯だった。「1次リーグに出場できない見込みで連れて行ってもらって、初めてノリさん(佐々木前監督)のなでしこジャパンで貢献できたと結果的に思えた試合だった。あの1点は、自信につながっています」。PKとはいえ、この日もオーストラリア相手に、本番へ弾みのつくゴールを決めた。

ただ、PK以外ではあまり見せ場を作れなかった。「多くの選手が絡んでゴールに迫るシーンはそんなになかった。回数を増やさないと、簡単にゴールは取れない」。脚の長い相手に、自慢のパスワークが通用しない部分も多かった。雨上がりのピッチは湿気が高く、「昼とは違うキツさ。夜だから大丈夫かなと思っていたぶんキツかった」と発見もあった。収穫も得て、なでしこジャパンはいよいよ初戦の地、札幌に乗り込む。【杉山理紗】