萩野公介(26=ブリヂストン)と瀬戸大也(27=TEAM DAIYA)が決勝を一緒に泳ぐ。萩野は1分57秒47で全体6位、瀬戸は1分56秒86で同3位で通過。ともに敗退を覚悟したがけっぷちから今大会初の決勝。萩野は号泣して、瀬戸は復調を支えてくれた代表コーチ陣に感謝した。小3の初対決から始まった2人のライバル物語は30日午前11時16分、東京五輪でクライマックスを迎える。

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ぬぐっても、ぬぐっても、涙があふれる。萩野は、決勝を決めて号泣した。「本当にいろんなことがありましたが、もう1本、決勝で(瀬戸)大也と泳げるなんて、神様がくれた贈り物としか思えないくらい幸せ」と涙をこぼした。

最後を覚悟していた。入場でスタンドを見て「平井先生(コーチ)の顔も見られた。それだけでいっぱいいっぱい。全力で泳ぐ」。苦手だった平泳ぎで伸びて6位通過。タイムは自身の日本記録1分55秒07に2秒40及ばない。それでも涙が出た。「うれし泣き以外の何ものでもない。五輪の神様が力を貸してくれた」。

19年春に3カ月の休養。その1年を振り返って「自分が水泳を嫌いになりそうだと、自分の口から平井先生に言ったことが一番ショックだった」と言った。リオ五輪男子400メートル個人メドレーを制し、金メダリストとして強くあらねば、とがんじがらめになっていた。「競技のことだけ考えたら、休まないほうがよかったかもしれない。でも休みが必要だった」。

ただ水泳は甘くはなかった。4月の代表決定後も調子が上がらなかった。6月のジャパンオープンは4位。五輪1カ月前には「状態は50~60%」とした。28日の予選前は「準決勝、決勝に残るのは今の僕には簡単ではない」と認めていた。

今大会最後のレースは、ライバル瀬戸と一緒に泳ぐ。「大也もやっと大也らしい泳ぎをしてくれて。僕もすごくうれしかった」。12年ロンドン五輪以降、2人のうち1人は世界大会でメダルを獲得した。東京五輪決勝でも、いつもの2人で競い合う。【益田一弘】