重量挙げ男子61キロ級で悲願の表彰台に挑んだ糸数陽一(30=警視庁)は、リオデジャネイロ五輪に続く2大会連続の4位で涙をのんだ。

「リオは全試技を挙げて4位。今回は成功率があまりよろしくなく、悔やまれる」。チャンスはあった。この5年間、年齢を重ね悲鳴を上げる肉体を酷使し、この一瞬にかけてきた。「メダル、見せてあげたかったですね」。声にいつもの快活さは失われていた。 届けたい先は故郷だった。沖縄で「神の島」と呼ばれる久高島生まれ。垂直跳びが85センチ。島民200人ほどの小さな島の海と山で、瞬発力で挙げる力持ちの素地は作られた。周囲のおおらかな優しさと応援も感じながら、競技を続けてきた15年目だった。 スナッチは1本目で失敗も、2本連続で挙げて3位で折り返した。だが、「減量で全身がつっていた」と臨んだジャークでは、2本を失敗。3本目の162キロを挙げればメダルも見えただけに、悔恨は増した。 近年は64年東京五輪金メダルの三宅義信氏の教えも仰いだ。メダルまであと少しの現実に、進退の明言は避けた。「開催していただけたことに、良い試技で恩返ししたかった。なかなか五輪はうまくいかないなあ」。そう言葉をかみしめた。【阿部健吾】