先日プレミアリーグから、過去マンチェスターCに複数の違反があったことが発表されました。今月に入り、財務規則違反の疑いで告発されたニュースが駆け巡ったわけです。
勝ち点はく奪や、最悪のケースとしてはプレミアリーグからの追放も考えられます。数年前から噂にはありましたが、あくまでも噂レベルでしかなく、当然チーム関係者はそんなことはないと口にしていました。実際のところ裏で何が起こっているのか、現地からの情報を集めてみました。
8割のクラブが赤字といわれてきたヨーロッパサッカーに対して、近年欧州サッカー連盟(UEFA)が主体となりフットボールの持続可能性を向上させる狙いで戦略的に転換を図ってきました。現UEFA会長のチェフェリン氏は、最終的にはサラリーキャップ制度を外す狙いを持っており、そこに向かう段階的な施策としてクラブの売上高によってコスト設定を行う新しいファイナンシャル・フェアプレー(FFP)のルールを設定してきました。このルールがコロナ・ショックによってある種やり直しになった形でしたが、現地の報道によると、2025-26シーズンを目処に再設定されるといいます。さらに詳細を見てみると、クラブの総支出を総収入の70%を上限とするとのことです。具体的にどこまでが収入・支出の項目として認められるのかなど詳細は未発表ではあるものの、最終的な70%のラインを目指して90%のライン設定から始めるようです。
当初のファイナンシャルルールを適用させたのが2014-15シーズン。その当初にいきなり指摘を受けたのがマンチェスターCでした。最初の処罰として欧州チャンピオンズリーグ(CL)の登録人数の制限の処分を受けるなどしたために、UEFAの本気度が感じられました。クラブのオーナーはアブダビの王族であり、エティハド航空を経営していたことからクラブと巨額のスポンサー契約を締結していました。しかしこのスポンサー契約は適正な価格を上回っているとUEFAは判断。企業の資本規模を大きく超える資金が企業を通してクラブに支払われていたということで、この資金が王族の個人資金であったことが注目されました。そして2020年2月に2シーズンにわたってUEFA主催のカップ戦に参加することができないという処分がくだされました。この処分は当時物議を催し、その後、スポーツ仲裁裁判所(CAS)により処分は覆されましたが、覆ったことにも疑問が湧いた事象でした。時を同じくしてカタール観光局をバックにつけたパリ・サンジェルマン(PSG)も同理由の違反による罰金処分として制裁を受け、CLの登録人数の制限の処分を受けました。どちらも中東の王族がバックにいることが注目され、UEFAの評議委員にPSGのオーナーが選出されていたことも重なり、もやもやしたものが残ったままコロナの期間に突入してしまいました。
スペインリーグの現会長であるテバス氏はこの資金投入を「ファイナンシャル・ドーピング」と呼んでいます。当然ですが王族の個人資産を相手に一般企業が対抗できるわけがありません。現段階ではそれぞれリーグごとに(国ごとに)ルールが管理されている状況ですが、UEFAとして全ヨーロッパのリーグをある程度統一したルールでまとめていくことが求められるのかもしれません。この場合はEU統合時にも出た問題でもありますが、経済格差における実体経済の差がそのまま浮き彫りになることは想像に難しくありませんが…。引き続き、欧州フットボールにおけるファイナンシャル面に注目していきたいと思います。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)




