今年の夏の移籍マーケットはどうしてもサウジアラビアに目が行きます。ただ、英国プレミアリーグは他のリーグと比べて1つまた違うテイストがあるように感じます。これは4大リーグの中でも特にリーグとしての収入が多く、その分各チームへの分配金の額も自然と大きくなります。例え下位チームであっても大きな収入があり、他リーグの下位チームと比べてここに大きな差があります。下位チームでもスター選手を獲得できる土壌があります。

2022-23シーズンにおいてはマンチェスター・シティーが優勝し、残留争いは最終節までもつれ込みましたがリーズ、レスター、サウサンプトンの降格が決定。1ポンド180円で換算すると、各クラブは国内放映権料(3180万ポンド=約57億2400万円)、海外放映権料(4890万ポンド=約88億200万円)、広告料(680万ポンド=約12億2400万円)からなる分配金として合計で8750万ポンド(=約157億5000万円)を受け取ります。現地の報道によると、各クラブへの分配金としては、マンチェスターCは1億6570万ポンド(=298億2600万円)が、一方20位のサウサンプトンは1億250万ポンドが分配されると報道されていますが、(円安もあり)1ポンド180円で計算したとしても20位のサウサンプトンは184億5000万円の分配金を手にすることになります。

一方、スペインのリーガエスパニョーラでは分配配分率など違いはあるものの、分配金そのものとしては1位のチームで6064万ユーロ、20位のチームで89万ユーロとなっており、1ユーロあたり155円の計算をしても1位のチームで約94億円、20位のチームはたったの1億4000万円弱にしかなりません。これほど大きな差があるわけで、やはりプレミアリーグの収入の大きさの違いを感じます。

そんなイングランドではありますが、サウジアラビアを中心とした中東のオイルマネーに対抗するかのように、この6月に労働許可証基準についていくつか変更を発表。基本的には今までは外国籍選手がプレミアリーグでのプレーを可能にするためには外国人労働許可証が必要で、このハードルが非常に高いものとなっていました。それを、今年6月に労働許可証を取得できない選手について各クラブ最大4選手と契約できるようにルールを改定。この“資格外選手枠”はイングランド人選手の出場時間に関する数値「加重EQP分率」に応じてクラブごとに変わるといった新しいルールが適用されることとなりました。選手の年代別及びA代表歴、前所属クラブでの出場やそのクラブの格付けなどをポイント化し、一定の基準を超えた場合のみ資格を満たすことが出来るようになるという新方式に切り替えるということになります。これがアジア選手には当然追い風となることが考えられます。

EU離脱を発表したイギリス。世界でも5番目とも言われるGDPを誇る経済大国で、要は自分達だけで国を運営していくという方針に切り替えたわけですが、同時にEUという後ろ盾がなくなったことも事実です。スポーツ面では、今までのようなヨーロッパ諸国の選手の移籍が減ると見られていた分、リーグのレベル低下を避けようと、新しい方法を模索してきたように見えます。一時、イングランドは若手選手の出場機会が奪われるなど自国の選手が育たず代表チームが全く勝てなかった時期もありました。近年では改めてホームグロウン制度を整備するなど、代表チームの活躍だけでなく、チャンピオンズリーグでもその力を発揮しています。今回の規制緩和が今後どのような影響を及ぼしていくのか、チーム戦略に大きく関わる部分であるからこそ余計に気になるところではありますが、今まで以上に新たなスター候補選手の出現も見ることができるのかもしれません。今後の日本人選手の活躍とともにプレミアリーグに注目です。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)