FW浅野拓磨(23)は今年、所属のシュツットガルトで1試合も出ていない。昨年8月にワールドカップ(W杯)出場決定弾を決めながら、今年3月のベルギー遠征で2年ぶりに日本代表から外れた男に何が起きているのか。現地で聞いた。

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 代表戦を映像で見たのは2年ぶりだった。ベルギー・リエージュでのマリ、ウクライナ戦。浅野の右FWは、同じリオ世代の久保と半年ぶり復帰の本田が180分間を分け合った。「久しぶりの光景。できるだけ客観的に見ようと」。

 代表で背負ってきた18番は、同い年で初選出の左FW中島(ポルティモネンセ)に渡り、得点も生まれた。浅野は画面から目を背けない。「自分が入った時、どうするかだけ考えていた」。思ったよりも表情は明るい。

 アーセナルから期限付き移籍中のシュツットガルトで今季は前半戦17試合中15試合に出場。ところが、今年に入って11試合連続で出番がない。代表も落選。日本がマリと引き分けた3月23日の夜には、ドイツ4部のピッチに立った。クラブの2軍にまじり、地域リーグのアストリア・ヴァルドルフ戦へ。評価の乱高下にも「自分が落ちている感覚は、これっぽっちもない。ただ、トップで出られないのは悔しいし、ヤバいなという焦り、危機感はある。慌てず毎日100%でやるしかない」。試合は1得点も、2-4で逆転負け。不運にも立場は同じままだ。

 暗転したのは年明けだった。恥骨炎で出遅れていた間に、重用してくれたウォルフ氏からコルクト氏に監督が交代。その後5勝3分けと負けがなく、先発組と控え組の序列にあらがえない差がついた。ライバルは前回優勝国ドイツの代表FWマリオ・ゴメスら。かつ、新監督は起用に冒険がないと評判だ。浅野にできることは、最後の1人になるまでの居残り練習と、ベンチ内外から試合を見て「自分が出た時に走り込む場所」をイメージすることだった。

 代表でも同じだ。マリ、ウクライナ戦ともハリルホジッチ監督がこだわる縦一辺倒の戦術は機能しなかった。その中で「うまくいってなかった(裏を狙う)部分で自分ならやれる確信を持てた」。昨年1月の練習で計った30メートル走のタイムは3秒67。地元誌にウサイン・ボルトの3秒70を超えたと報じられた。縦に速く、で浅野以上の駒はない。3月に合格者がほぼ出なかった状況下、ハリルホジッチ監督の中で相対評価が戻っていても不自然ではない。

 実際、遠征後に日本協会は手倉森コーチと早川コンディショニングコーチを浅野の元へ派遣。帰国後の4月4日にルヴァン杯(仙台)を視察した手倉森氏によると、クラブ側に体調データの交換を要請した。可能であれば数値に応じた練習が追加され、W杯まで状態を上げていく一助になる。

 浅野は昨夏のW杯最終予選オーストラリア戦でW杯出場決定弾を奪い、同11月の欧州遠征ベルギー戦も先発。0-1で敗れたが、ハリルホジッチ監督が「ライオンを追い詰めた」と自賛した試合で貢献している。残り2カ月弱。「W杯まで移籍できないし、どうあがいても、もがいても、この状況から逃げ出せない。1日1日やるだけ」。4部の試合に出た日、ドイツ誌に「W杯の夢は消えた」と報じられたが笑い飛ばした。「W杯を諦めるなんて、一生、口が裂けても言う日は来ないです」。【木下淳】